三度のメシより高校野球!
野球オヤジ手束 仁の
高校野球観戦日記


2005年 静岡草薙球場に於






  ほぼ週刊テヅカ
2008年7月2日(水)
第284回
 いよいよ夏到来という感じだ。
 今年は、北京五輪の年で、記念大会ということもあってそれらの条件が重なり合って、甲子園大会そのものの開催が例年より約1週間早い。その影響で、地区大会の日程が前倒しになった地区も多い。
 愛知県では6月の最終週の週末から開幕。いつにない早い開始となった。東京も例年より1週間早く7月第1週の週末から始まる。

6月26日(木)
練習試合(川口市営球場ナイター)

中央学院 000 000 110=2
市立川口 121 251 03X=15

 梅雨の合間を縫って、各チーム調整に余念がない。週末に予定していた練習試合が天候不順などで流れることも多いので、とにかくやれるときに実戦を経験しておこうということで、とくに首都圏などではナイターで借りられる球場を利用して平日でも夕方に積極的に試合を組んでいくということも多い。

 市立高校ということで比較的川口市営を借りやすい市立川口も、そうした形でスケジュールを組んでいる。とくに、今年は高木君というプロも注目する速球派投手がいるだけに、長井秀夫監督も行ける感触をつかんでいるだけに、とくにこの時期の調整は大切だ。

 この試合も高木君は先発して5イニングを投げた。必ずしもベストという調子ではなく、とくに立ち上がりなどはやや制球も乱れていたが、それでも5回で7奪三振。打者18人に対して被安打は1、四球が2で暴投が1。

 とくに、強引に三振を取りにいこうというものではないのだが、結果的に相手打者が当てきれないという感じでの三振だった。奪った三振7つがすべてスイングアウトというのも、球の伸びの証明であろう。また、一見フォークのようにも見えるが、タテのスッと落ちていくスライダーは有効だった。


 攻めても、市立川口は7回の三者凡退以外はすべて得点した。4回には1年生のリードオフマン鈴木祐君が左中間を破るとそのままベース1週のランニング本塁打も放った。8回には、無死一二塁でバントすると二塁走者の弧原君は、一気に本塁を突くというプレーも見せた。「ベスト8以上で戦う場合、まともにフツーのことだけをやっていては力負けしますから、こういうこともあるんだぞという意識づけのために、普段から練習しているプレーです」と、長井監督も言うように、先を見た戦いをするために、より積極的な走塁を掲げて、それを実行しているということが見えた。


 中央学院は、かつての手賀沼をイメージしたようなブルー地のユニホームから一新。赤を基調としたデザインは、相馬幸樹監督の出身母体でもあるシダックスをイメージしたものだという。選手個々の力はかなりのレベルにあるが、チームとしてのまとまりに粗さが感じられた。それでも、そー無の伸びシロは十分に感じられた。

 
 
6月28日(土)
練習試合(総合工科グラウンド)

 府 中 工 000 000 100=1
総合工科 010 031 00X=5

総合工科 200 021 100=6
 府 中 工 023 020 00X=7

 東京都は、いよいよ来週からは大会が始まる。ということで、この週が夏の大会前の最後の練習試合というところも少なくない。
 創部3年目、今年初めて全学年が揃った総合工科だが、チームの雰囲気は、もう何年も大会に参加している学校のようだ。というのも、選手たちはそれだけ試合慣れしているし、自信もあるのだろう。すべてに余裕が感じられる。それは、3年前に、1年生だけでスタートしたときからチームを見ている千葉智久監督も実感していることである。

 しかも、チームそのものも層が厚くなり、クリーンアップと投手に2年生を起用しているが、これも公立校によくある、とくにこれといった選手かいないから、下級生を起用しているというのではなく、層が厚い中からより高い質の選手が起用されているというものである。

 
この日の試合でも5回、2死から失策で出塁すると四番森君は右中間を破る二塁打で返す。さらに、河西君が左翼へズドーンと2ラン。「コースが少し甘いと、スタンドへ持っていく力は十分にありますよ」(千葉監督)というように、府中工の左腕大庭君のカーブが少し甘く高めに入ってきたところを完璧に打った。総工は6回にも2死から古山君が右前打すると三番千葉君が右翼線へ運んだ二塁打で迎え入れて5点目。こうして、2死走者なしからでも得点できる打線の破壊力は見事だ。

 このリードを石川君が8回守りきった。7回に山崎君の二塁打と五番市川君の中前タイムリーで1点を許すものの、走者は出しても投球は安定していた。それでも、四球が多くまだ課題は残した。

 この日は総合工科の選手の父母が集まって、来るべき大会へ向けて千羽鶴作りを行なっていた。今の時期は、こうした光景も各校のグラウンドの片隅で見られることである。

 また、選手たちは大会登録メンバーもほぼ出揃ったところで、意識も高まっているところだろう。総合工科では2試合目に3回途中から投げて好投した山崎君などは、昨年から今年にかけて、格段に成長した投手だという。部員も多く、層の厚い総合工科だけに与えられたチャンスを確実にものにしていくのは大事なことだ。そういう意味でも、そうやって自身をアピールしてきたのは立派だ。


 府中工は前任の宮本秀樹監督の異動(4月より片倉へ)に伴なって、昨秋からコーチを務めていた井上裕士監督が就任している。「夏へ向けては、まだ不安だらけですよ」と言っているが、守りはしっかりしており、大崩れするチームではない。大庭君、磯部君の投手陣は「人がよすぎる」くらいだというので、勝負どころでそれが出なければ、ある程度いける感触はあるはずだ。

 
今週のエンドメッセージ

 週末の大雨は早くも日程を狂わせています。
 総合工科の試合を見た後、例年よりも2週間早い愛知大会の開幕ということもあって、翌日は刈谷へ向かったのですが、見事に雨で中止。完璧な空振りに終わりました。
 ボクも痛いけれど、大会運営の人たちも頭が痛いことでしょう。しかも、愛知大会は開幕戦がいきなり延長15回の引き分けで再試合。開幕を2週間早めたのに、結局、1試合も消化されなかったということになってしまいました。
 今年は軒並み開幕が早いのですが、梅雨時でもあります。各地の高野連関係者は天気予報と日程表とのにらめっこで、頭の痛い日々も続くことでしょう。
2008年6月24日(火)
第283回

 全国各地の組み合わせもほぼ決まりつつあり、選手たちもいよいよ大会本番モードになっていっていることだろう。今年は、甲子園大会の始まりが例年よりも1週間早いということもあって、代表が決まった時点でその場で本大会のくじを引くというシステムがとられるそうだ。また、甲子園練習もないということなので、例年とは多少異なった大会になる。
 しかし、甲子園の熱さそのものは変わらないはずだ。リニューアル甲子園での最初の夏の大会でもある。

6月14日(土)
練習試合(関東一 白井グラウンド)

 関 東 一 101 000 202=6
中京大中京 000 000 000=0

 朝6時に名古屋市内の学校を出発して知多バスで東名高速を走って上京してきた中京大中京。ちょうど6時間かかったというが、この日は関東一との1試合のみ。翌日は日大三と志学館との変則ダブルということである。

 毎年ながら、中京大中京はこの時期、かなりハードな練習を貸して身体に負荷をかけていくという方法をとっている。したがって選手たちの身体の切れも正直あまりよくない。それを承知での遠征ということである。

 そんな状況だっただけに、関東一の松本君がベストに近い状態で投げてきたら、終わってみたら4安打散発で完封されてしまった。しかも、そのうちの3本が二番中山君が放ったもので、それだけ打線はやや湿っているというか、疲れのピークといってもいいのだろう。大藤敏行監督もそれは十分承知で、「今のうちに落とし込んどいて、来週あたりから徐々に作り直していって、大会へもって行くと行こうかなと思ってます」と言うように、春季大会優勝でシード校でもあり、あと1ヵ月、7月中旬へ向けての調整しているというところだろう。


 関東一は初回、四球、盗塁、バントで1死三塁を作ると内野ゴロの間に先制。3回は三番玉井君の三遊間を破るタイムリー打で加点。7回にもその玉井君の三塁打などで2点を追加して、打つべき中軸が打つといういい形の得点だった。

そして、何と言っても松本君の好投だ。米澤貴光監督も、「今日はこのところでは一番よかったです。ストライクをどんどん投げ込んで、自分で崩れなかったのが大きかったですね」と、精神的な成長を評価していた。186cmという長身大型投手だけにエンジンのかかりが遅いところもあろうが、この日は最初からいい感じで飛ばしていた。投手の素材としても、これからまだまだ伸びていきそうな感じだった。

 

6月15日(日)
練習試合(日大二 立川グラウンド)

 修善寺工 000 100 000=1
日 大 二 000 000 02X=2

修善寺工 230 000 000=5
千葉日大一 002 000 100=3

 日 大 二  010 001 040=6
千葉日大一 050 020 01X=8

 日大二の立川グラウンドに合宿所というか、宿泊可能なスポーツクラブハウスが完成した。この日はそれを見せてもらうことも含めて訪問した。折りしも、選手たちは前日に宿泊したところなので、ベランダには多数の布団が干してあった。立川グラウンドを使用する運動部全体の研修棟ということだが、田中吉樹監督はこの管理人を兼務しているという。
 
 この日は、修善寺工と千葉日大一を迎えての変則ダブルである。日大二打線は修善寺工の軟投型の萩坂君にタイミングが合わず苦しんでいたが8回、1死から吐田(はんだ)君が三塁内野安打で出塁すると代走窪寺君が二盗。続く川野君が右中間へ二塁打して同点。さらに福島君がつなぎ、先発して好投していた六番石井達君のスクイズで逆転した。「最後は勝ちを意識した」(田中監督)というように、何とか得点していく執念は見事だった。

 修善寺工は4回に三番石川君が放った左翼ソロの1点を萩坂君が守っていたのだが、最後に掴まってしまった。それでも、一見華奢ながら粘り強い投球だった。土屋義弘監督は、「伊豆半島の地元の子たちだけのチームですから、力はありません」と言うが、選手たちのひたむきさは十分に伝わってきた。


 千葉日大一との試合では、相手投手の制球の乱れに乗じて序盤にリード。これを左腕の伊里君が7回まで守りきり、立林君がリリーフして逃げ切った。もっとも、この試合は千葉日大一の先発渡部君が2回1/3で6四死球(うち死球が4)と大きく乱れたこともあって、試合のリズムも停滞して3時間以上の試合となってしまった。千葉日大一の稗田徹監督もいささかムッとしていた。

 
 しかし、日大二に対して投げた左腕遠藤君は190cmの長身から、ズバッと投げ込んでくる。この日は最速133km/hだったが、まだまだこれから先、投手としても大きく成長していきそうな感じだ。稗田監督も、「8回だけ、投げ急いで連続ヒットされましたが、今日はとくによかったです。左の大型投手は化ける可能性があるといわれていますから、期待しているんです」とその素質に期待している。
 対して日大二のエース澤田君は2回に掴まって5失点。もう一つ本調子に慣れなかった。澤田君は投打の中心だが、この日は四番打者としては遠藤君に対して3安打と気を吐いたものの、投手としては制球にも苦しみ、結局5回0/3投げて7失点で左翼へ下がり、左腕金澤君のリリーフを仰いだ。本番まであと1ヵ月、日大二としてはもう少し投手陣を整備したいところである。
 千葉日大一では四番の三橋君が見た目以上に器用に左へ流していく打撃で3安打していたのが光った。遠藤投手が好投したら、上位を十分に窺えるチーム力である。

今週のエンドメッセージ
 梅雨真っ只中ということもあって、21〜22日の週末は連日ともほぼ終日雨でした。多くの学校では予定していた練習試合が流れてしまったようです。
 ボクは、雨の中駒沢オリンピック公園へ出かけました。ここは今の時期高校スポーツ花盛りで、球技場ではサッカー、体育館では女子バレー、屋内球技場では男女ハンドボールのそれぞれインターハイの東京都代表決定戦が行なわれていました。
 陸上競技場では関東高校陸上大会が開催されており、各会場とも頑張る高校生で溢れていました。
 何となく、いい雰囲気だなと思いながら、全国でもベスト8から16レベルといってもいい、東京都の高校女子バレー4強激突を見てきました。結果は、八王子実践が1位、下北沢成徳がセット率で2位。ここまでが全国へ出場。3位は駿台学園、文京学院大女子は八王子実践を下しながらもセット率で4位に留まりました。

2008年6月17日(火)
第282回

 この時期は大学野球選手権があり、連日神宮や東京ドームへ通っていた。
 全国から各連盟の優勝校が集まっての大会だが、となりの神宮第二球場では東都リーグの2部と3部の入替戦が行なわれていた。昨秋は1部で戦っていた國學院が3部との入替戦に出場している。
 ボクの母校でもあり、全日本選手権で賑わうメイン球場を尻目に、閑散とした中で残留をかけて必死の戦いを見て来た。辛うじて大正大に連勝して何とか残留した。それにしても、改めて戦国東都リーグの厳しさを思い知らされた。



6月7日(土)
練習試合(市立川越グラウンド)

立教池袋 000 020 1=3
市立川越 533 300 X=14 (7回打ち切り)

立 教 池 袋 050 000 0=5
木更津総合 050 040 6X=15 (7回打ち切り)

市 立 川 越 000 020 300=5
木更津総合 003 101 000=5 

 今春の関東大会優勝の木更津総合とベスト8の市立川越は、3月に一度練習試合を組み、2試合1―0で市立川越が勝利したのだが、その再戦である。実は、3月のそのときにお互いに手ごたえを感じたということもあり、「6月あたりでもう一度お願いできませんか」ということになって、本来、立教池袋との試合が決まっていたこの日に、木更津総合が入っての変則ダブルとなった。

 木更津総合は淡路君、市立川崎は注目の井口君が投げて投手戦が期待されたが、木更津総合は3回、この日地引君に代わって四番に入っている荒川君が左翼へ3ランして先制。4回、6回にも1点ずつを失うが、「今は選手たちにもある程度負荷をかける練習をしているから披露のピークなんですよ。だから、相手は関東優勝校だし、ある程度打たれてもいいとは言っていたんですよ。5点まではいいから7点とって勝てっていったんですけれど、2点届かなかったかな」と新井清司監督も今の時期のエースの失点はさほど気にはしていなかった。


 その市立川越は7回に好打者三番の遠藤君が左中間へ運んで二者を帰して1点差。さらに川畑君が中前タイムリー打して同点とした。さらに、9回は2死から3四球で一打逆転という場面を作ったが、あと一歩及ばず。そして、その裏1死二塁のピンチを逃れてドローとなった。「練習試合なのに、9回はすごくドキドキしちゃいました」と、金野マネージャーはベンチでの緊張感を味わっていた。それだけ、お互いの緊迫感があった試合ということがいえよう。


 こういう対戦になって、最初の2試合を戦った立教池袋の古賀賢之監督は、「こんな中にいて、うちなんか完全に浮いていますよ。だけど、今まで経験したことのないような強い打球に対してどうするのか、こういういい投手をどう攻めていくのかということでは非常に勉強になりました。もっとも、対応し切れてはいませんでしたけれども…」と苦笑していた。

 それでも最終的にはひっくり返されるものの、木更津総合に対して2回、1死から七番佐野航君以下バント安打、四球を挟んで四番細木君の三塁線ニ塁打など6打数連続安打を放って、5点を奪ったのは見事だった。
 しかし、その裏すぐに木更津総合は5点を返し、5回に4点、7回には立教の守りのミスもあって、竹垣君、和田君の二塁打などで6点。10点差で打ち切りとなった。

 また1試合目も市立川越が穐元君、遠藤君の本塁打など6回で12安打、7四死球2失策で4回までに14点を奪い、下手投げの下村君がスイスイと4回を投げ以降、熊田君、今村君で交わした。立教池袋は人数もいっぱいいっぱいで、1年生を起用せざるを得ないというのも実情だ。八番遊撃手(二塁手)の南部君やリリーフした松葉君など1年生たちにとっては、改めて高校野球の質の高さを知るいい機会だったかもしれない。


6月8日(日)
練習試合(坂戸西グラウンド)

坂戸西 000 100 000=1
 城 東 100 002 10X=4 

坂戸西 000 111 012=6
越谷西 000 001 010=2 

越谷西 001 130 000=5
 城 東 121 100 000=5 

 今春、文京から平岩了監督が異動してきた城東。春季大会以降に現在の平岩城東体制となって2ヵ月。前任の梨本浩司監督時代は01年に甲子園出場を果たしている城東だが、打撃が他チームを作ってきた梨本監督から、日比谷→文京を通じてきっちりと守れる野球を提唱してきている平岩監督が、どういうチームとして引き継いでいっているのか非常に興味があった。

 ちなみに、坂戸西の野中祐之監督と梨本監督は日体大の同期、平岩監督はその2年上という関係である。
 城東は100人以上いる部員の中から、五番に1年生の宍倉君を起用している。その宍倉君が、初回に中前へ先制タイムリー。6回にも1死二三塁から中前タイムリー打して勝ち越し点を挙げている。宍倉君は越谷西との試合でも三番に入り初回に左翼へ先制ソロを放つなど、その非凡さを十分にアピールしていた。
 
 この日の試合の組み方は通常の変則ダブルとは少し異なっており、諸事情によりホームの坂戸西が1、2試合目、近いビジターの越谷西が2、3試合目、遠いビジターの城東が1、3試合目という一番難しい試合順となってしまった。練習試合では、こうしたコンディション作りや待ち時間の過ごし方なども含めて練習という捉え方もできる。

 同県同士の越谷西と坂戸西だが記念大会の今年は夏の大会での対戦がないので、お互い手の内を無理して隠すこともなく、むしろそれぞれどんどん試していこうという形になった。
 坂戸西は野中監督が捕手出身ということもあるのだが、捕手を一番のポイントとしている。どちらの試合でも小高君と畑野君を起用していたが、打撃がいいという小高君は越谷西戦で本塁打している。しかし、城東戦で前半の緊迫の投手戦を作ったのは畑野君である。どういう起用をしていくのかは最後まで迷いそうだ。それでも、それぞれの意識が高まりレベルが向上していけば野中監督としては嬉しい悩みでもある。

 越谷西は伏見徹監督期待の左腕渡辺啓君が城東戦で完投したが、立ち上がりはややペースに乗り切れず、4回まで毎回失点を許してしまったのは今後への課題といえそうだ。それでも、チームとしては敵失に乗じたとはいえ3点差を所君の二塁打などで5回に一気に詰めたのは評価できそうだ。そして、終盤は5―5のまま緊迫した展開となった。

 9回無死一二塁となったところで越谷西の打者は小細工のある赤川君というところで城東は一塁手が投手の横に守り、右翼手を一塁に入れ、外野がそれぞ大きく右へ移動して左翼が空いた内野5人シフトを敷いてきた。

「もちろん、バントを予測しての一か八かのシフトです。もし、三遊間を抜かれたらといわれますけれど、それはしょうがないですよ。ただ、高校生ですからそこで『あれっ?』と思うと変な打ち方にもなって、結局狙ったところへは打てないものなんですよ」と平岩監督はその意図を話してくれた。
 結果は、中堅の位置にいた左翼手のところへ上がった飛球という形になった。もちろん、「公式戦でも勝負どころではやる可能性はありますよ」ということでこういうシフトを組んでいるのだ。


 城東は坂戸西戦では本来捕手の加倉井君が2イニング投げ、その後を左腕の長谷川君へつないで交わした。越谷西戦では山城君から関根君へつないでいったが、関根君が5回失策があったとはいえ3点を失ったのが悔やまれる。
 尚、城東は01年の甲子園出場時の主将で現在は早稲田大大学院の研究生として野球を学んでいる茶川剛志君がコーチとして同行していた。甲子園での経験を後輩たちに伝えながら、自らも野球の奥深さを学んでいる。やがて、監督としてどこかの学校で指導者として甲子園を目指していきたいという。


今週のエンドメッセージ
 14日に東西東京を始め、南北神奈川、東西千葉、鹿児島、岐阜など一気に8地区の組み合わせが決まりました。17日には南北埼玉が決まり、18日に長崎、大分、19日に佐賀、熊本、宮崎、山梨福島が決まり、週末には東西愛知や静岡、南北大阪東西兵庫といった注目地区も決まります。いよいよ、夏モードに入っていきます。

 プロ野球ファンが2月のキャンプインから3月のオープン戦が楽しいのと同じで、高校野球オヤジや高校野球ファンは一番ワクワクする時期でもあります。
 それは、この時点ではどの学校にも甲子園の夢があり、チャンスがあり、期待があるからです。そんな、夢と期待を背負って選手たちは、十代のエネルギーを燃やし続けるのです。それに対して我々大人ができることは、しっかりと見つめて応援してあげることだと思います。
 今年も猛暑が予想されます。今から体調をしっかりと整えておきましょう。

2008年6月10日(火)
第281回

 10日から全日本大学野球選手権大会が始まる。東京六大学からは斎藤佑樹君がいる早稲田大にメディアの注目が集まる中で、意地を示したともいえる優勝で明治が登場する。力があるのは東洋大、近畿大を含めた3校といわれている。しかし、初出場となる愛知の中部大や金沢星稜大、常連の東北福祉大や、東海大菅生から異動した横井人輝監督率いる首都大学の雄東海大などの戦いぶりも楽しみだ。
 この大会と並行しながら、都市対抗の地区予選も進行していき、その代表が決まりかかる頃から全国各地で高校野球の地区大会が始まっていく。アマチュア野球の世界も忙しい。
 
5月23日(金)
春季東海地区大会(静岡草薙球場)

上  野 000 00=0
常葉橘 1091 0X=20 (5回コールドゲーム)

愛知啓成 100 000 000=1
 菰  野 000 000 000=0

 思わぬ大差と、スミ1の僅差という対照的な2試合を見ることになった。
 上野は頼りの先発森垣君が自分のリズムに乗り切れないままに、いきなり四球を一つ挟んで6打席連続安打。アウトが一つもないまま5者連続得点を許してしまった。結局、八番稲角君の中犠飛が最初のアウトになった。しかし、さらに常葉橘の攻撃は続きバント失策などでさらに走者がたまり、一番杉山君が左翼へ3ランして初回で10点。

 2回も常葉橘の攻撃は止まらず、5連打や庄司君の満塁本塁打などで9点。試合そのものは完全に決着がついてしまった。

 投手としての庄司君は必ずしもベストではなかったが、大量リードで余裕の投球だった。小林正具監督も、「選手たちが自分のやるべきことをやっており、点が沢山入っても集中を失わなかったのは大きいです。安打数(21)と得点があまり違わないということを評価したいです」と語っていた。

 次の試合は好投手の投げ合いで、一転して僅差の試合となった。お互いが攻めきれないというよりは投手がよく辛抱して投げていた。
 菰野の西投手はスカウトからの評価も高く、県内では宇治山田商の平生君と比較称せられている。力でぐいぐいと押してくるのかと思っていたが、むしろシャープな切れが持ち味だ。ストレートは手元でもうひと伸びしてくる感じである。
 
 これに対して愛知啓成は加古君が5回、小出君が4回を投げて二人で完封した。加古君はリズムよく投げ込んでくるタイプで、被安打は3。小出君はこの大会背番号1を貰っているが、左腕からの大きなカーブはソフトバンクの杉内ばりである。この落差はわかっていても早々簡単には手が出ないだろうと思う。これに下手投げの二村君と、この大会では欠場していたが140km/h以上のストレートが評判の村瀬君という投手もおり、愛知啓成の投手陣は分厚い。


 両チーム合わせて唯一の得点は初回、愛知啓成は松本君が中前打で出るとすかさず二盗。森田君の右前打で一三塁となり、2死となった後六番阿部君が中前打で返してあげたものだった。岡田敬三監督は、「好投手と聞いていたんですが、それだけに、立ち上がりを攻めるのは鉄則です」というように、積極策が得点に結びついた。
 しかし、まさかこの1点が決勝点になるとは岡田監督も、菰野戸田直光監督も思っていなかったであろう。菰野は9回に、二番笠井君、川畑君の連打などで一打同点逆転の場面を作ったものの、最後は五番に入っていた西君の一塁ゴロで万事休すとなった。


5月24日(土)
春季近畿地区大会 1回戦(西京極球場)

 近 江  000 010 000=1
智弁学園 102 100 00X=4

   社    000 000 102=3
福知山成美 000 400 00X=4

 天気予報はよくなく、昼頃からはジトジトと降ったり止んだりという状況になったが、何とか予定通り大会が進行したのはよかった。
 小熊君の投球が注目された近江だったが、初回に先頭の米田君に四球を与え、そこから稲森君の中前打などで一三塁となり、内野ゴロで生還して智弁学園が先制。3回にも、米田君の二塁打に稲森君の右前タイムリー打に押し出しなどで加点した。小熊君としては、立ち上がりの四球でやや自分の投球ができにくくなってしまったというところもあったようだ。智弁学園は4回にも稲森君の中前タイムリーで追加点を入れた。小坂将商監督は、「稲森がいい仕事をしてくれましたね。相手の投手がいいと聞いていましたから、前半球数を多く投げさせていこうとしてのですが、それがいい結果として得点につながりました」と、稲森君の好打と、序盤の各打者の粘りを評価した。

 近江は5回に八番中川君の二塁打に西田君の内野安打などで1点を返したものの、届かなかった。多賀章仁監督は敗因としては初回の米田君への四球を挙げた。「大きく言えば初回の6球目ですよ。小熊は三振をとりにいったと思うんですが、相手の打者がよく見ました。あれで動揺しました。小熊が四球で始まるということはまずないことですから」と、コントロールに自信のある小熊君が先頭打者に四球を与えたこと、さらには押し出してしまったことを残念がった。


 じとじとと小雨が降る中で行われた第二試合は、そんな悪条件の下淡々と進んでいったが、京都府大会準優勝の福知山成美がワンチャンスを生かして勝利をものにした。福知山成美は4回、死球とバント安打などで1死満塁のチャンスを作ると、一番へ回って生駒君が左中間二塁打して2点。さらに、植田君の左前タイムリー打や深瀬君の左犠飛でこの回4点。社の井上君はこの回でマウンドを降りた。

 社は以降リリーフした高橋侑君がいい感じで投げて福知山成美打線を抑えて反撃を待ったが、7回に代打有本君のタイムリーで1点を返し、9回は福知山成美の背番号9をつけて二番に入って先発した植田投手が、この回になって勝ちを意識して投げ急いだのをついて2点を返し、粘りを示したがそこまでだった。


 社の森脇忠之監督は、「試合としては4−1の試合でしたね。まあ、負けは負けなんですけれども、そんな中で春先からヒジの故障でほとんど投げられなかった高橋が、こうしたレベルの高い公式戦という舞台で投げて、好投できたのは大きかったです」と、夏を見据えて収穫はあったという思いである。激戦の兵庫県で、公立の雄として一泡ふかそうとしている社としては、その手ごたえは十分あったという印象だった。


今週のエンドメッセージ
男子バレーボールが16年ぶりの五輪出場を決めました。その瞬間、植田辰哉監督はコートに大の字になって倒れ伏し、荻野正二涙涙でした。もう、だいぶ前ですが『Number Video』の仕事で二人を取材したことがありました。植田さんは気障なくらいカッコいいやつでした。荻野選手は無骨なまでに不器用な感じでしたが誠実さが伝わってきました。

 そして、当時松平康隆理事長にも話を窺ったのですが、「あの男は素晴らしい。将来の日本のバレーを背負って立てる男だ」と植田監督(当時主将)のことを絶賛していました。
 今、その通りになって、荻野正二の涙にも感動しました。「嬉しいです。……、今までやっていてよかった」短い言葉の中に、本当に重さを感じました。

2008年6月3日(火)
第280回

 5月中旬から下旬は各地で春季地区大会が開催されていて忙しい。
 ボクも、それらの大会を追いかけて甲府から静岡、京都、さらには場合によっては金沢か山形と旅をすることになる。野球を求めて西へ東へ、まるで野球寅さんだ。まさに野球寅次郎とでも名乗ろうかと思うくらいだ。
 そして、甲府ではあたかも寅さんのように、それぞれの野球オヤジたちに世話になってしまった。小瀬スポーツ公園は不便なところだっただけに、足として運んでくれたオヤジたちはありがたかった。これもまた、野球一期一会とでもいおうか。


5月17日(土)
春季関東地区大会 1回戦・2回戦(小瀬スポーツ公園球場)

市立柏 000 000 001=1
日大三 000 000 002x=2 

富士学苑 100 000 100 00=2
 横 浜  000 200 000 01X=3 (延長11回) 

宇 都 宮 工 010 200 000=3
木更津総合 103 400 00×=8

 ネット裏には、いつも見る高校野球ファンやスカウト連中がずらり。好天にも恵まれたが、さすがに関東大会だ。それにしても、こんな不便なところなのによく人が集まると思う。そして、あいさつ代わりに交わされる言葉が「どうやって来たの」である。それぞれ、苦労しながら目的の試合を見にやって来たのだ。
 
 日大三には固定ファンが多い。その人たちにとっても、市立柏の松村君がどういう投球をするのかは注目していた。ただ、松村君は立ち上がりから力み過ぎということもあってもう一つだった。「悪いなりにもよくこらえてくれて、4回以降はかなりよくなっていましたから。ただ、9回せっかく貰った1点(押し出し)だったんですが、それを守りきれないところがウチと日大三との違いでしょうか」と、市立柏福嶋紀和監督は最後の最後に逆転した日大三の粘りを称した。

 日大三は9回岡君の死球と田代君のバントが安打になるなどで満塁とし、ここで一番田中洋平君がサヨナラの2点タイムリー打を放った。関谷君はスライダーとフォークのような抜いた球を中心に組み立て、粘りの投球が功を奏した。


 横浜との延長の大熱戦を逃した富士学苑後藤篤監督は、「悔しいね、ここまでやれたからいいというのじゃなくて、ここまでやれたから勝ちたいですよ。それを選手たちも本当に心から思っているかどうか、その気持ちをバネにできればもう人伸びできます」と語った。1年生の加藤君が先発して2回を投げ、倉本君は失策絡みで1点を失って松永君へつないだ。

 松永君は犠飛こそ許したものの以降9回まで1人の走者も出さない好投だった。110〜120km/hのストレートとカーブが中心の左腕投手だが、上手にタイミングをはずしていた。11回も横浜は失策で出た走者を二塁に進め、松本君がどん詰まりながら中前へ運んでそれがサヨナラとなった。

 2試合連続のサヨナラ試合でさすがに各都県の強豪校の試合である。

 途中からナイターとなった3試合目。プロスカウトも注目する好補手地引君がいる木更津総合は、彼の4打数3安打4打点の活躍と田中君が県大会の決勝戦での無安打無失点以来の登板となり、間があきすぎてもうひとつという状態ではあったものの、5回以降は1安打に抑えた。五島卓道監督は、「まあ、決勝戦のときよりいい投球なんていうのはそうはできるものではないですよ。6回に失策で二三塁のピンチになったところをよく踏ん張ったのが一番です」と、評価した。ただし、失策の重なった守りに関しては、もう一度引き締めなくてはならないと課題としていた。


5月18日(日)
春季関東地区大会 2回戦(小瀬スポーツ公園球場)

 甲 府 工 300 001 100 11=7
聖望学園 005 000 000 10=6 (延長11回)

山 梨 学 院 002 100 011=5
東海大相模 102 120 11X=8

帝 京 100 120 000=4
霞ヶ浦 001 000 000=1

市 立 川 越 000 020 000=2
東海大甲府 000 000 000=0

 この日は朝8時半から4試合、甲子園並みのハードスケジュールだが、4試合目の開始はいきなりナイターの午後6時から。「12時半には球場に来ていたから、待ちくたびれちゃったよ。でも最初から完全にナイターでプロ野球みたいだし、選手たちは喜んでたんじゃないの」と市立川越の新井清司監督はも井口君が予定通りの好投でスパッとシャットアウトしての勝利だけに、長い待機だったが試合後は上機嫌だった。

 井口君は終わってみたら被安打4、切れのいいスライダーと伸びのあるストレートが決まる。対する東海大甲府の渡辺君も好投し、お互いが2桁三振を奪うという好投手戦だった。渡辺君も村中秀人監督譲りの左腕からの大きなカーブはほとんど打たれない。ただし、市立川越は三番左の遠藤君がそのカーブを上手に左中間へ打ってこれが先制のタイムリー三塁打となった。さらに曲がりすぎたカーブがワイルドピッチとなり遠藤君も生還して2点目。結局この得点のみだった。


 地元の人気校甲府工が1試合目ということで、朝早くから多くの熱心なファンが足を運んでいた。
 県大会3位ながら、地元開催ということで出場権が与えられた甲府工。センバツ準優勝の聖望学園に対してチャレンジャーという気持ちでぶつかっていった。それが、初回に松山君の2点タイムリー打などで3点を奪う先制攻撃に結びついた。5回に逆転されても、6回にはスクイズで1点差とし、7回には一番諏訪君が右前へタイムー打して同点。そのまま延長にもつれ込んだ。

 10回にはお互いが1点ずつとりあうという展開になったが11回、甲府工は安打の佐藤太君が二塁へ進み三枝君の一打は左翼手が「ボールが見えなくなった」という当たりになって頭上を破る二塁だとなりこれが決勝点となった。

 試合後、聖望学園の岡本幹なり監督は独特の関西弁で自嘲気味に、「まあ、これでセンバツ以来塗りまくっていたメッキが剥げたというこっちゃね。これから夏へ向けてもう1回本当に甲子園へ行きたいと思う気持ちを作っていくことや」と言いながらも、気持ちを引き締め直していた。

 東海大相模は力ずくの点の取り合いを制した。エース大城君は必ずしもベストではなかったようだが、フォームをチェックしながら辛抱の投球だった。打線も15安打したが、その割には無駄な安打も多く門馬敬二監督も、勝ったものの必ずしも満足はしていなかった。「出来ることなら、これから帰って一からの練習をし直したいくらいです」と、流れの悪さを実感していたようだ。
 山梨学院は昨年12月に就任した須田嘉照監督にとって初めての関東大会となった。須田監督は専大から東芝へ進み、東芝投手王国の一時代の一角を担った人である。

 帝京は米持君と高島君の継投で、霞ヶ浦を1安打に抑えた。打線は前田三夫監督が、「もうちょっと打ちないといけないよね。もの足りないでしょ」と言うように、9安打したものの決め手を欠いているという印象だった。ただ、春季大会でエースに続く投手を育てていくというテーマからす
れば、都大会から継続して米持君の成長は大きいのだろう。

今週のエンドメッセージ
 春季地区大会は関東は木更津総合が、東海は常葉橘がそれぞれ優勝しました。どちらも、投手が安定しているチームでした。多くの監督たちが、春季大会ではエースに継ぐ投手を成長させたいということを言いますが、エースに自信を持たせていくという戦いもありということです。近畿地区も奈良、和歌山の智弁勢と、福知山成美に大阪桐蔭といういずれ劣らぬ強豪が4強に名を連ねました。

2008年6月3日(火)
第279回

 ビックリした。先日、某球場でのことだった。春季県大会は各紙の支局や地方紙の若い担当者が夏本番へ向けて取材練習をすることも多い。
 ボクも近頃は記者席で取材をさせてもらう機会も多くなり、そんな場面にも遭遇するのだが、「野球見るの、今日が初めてなんです」という若い女性記者がいた。
 最低限、それはいいとしても、併殺崩れとなったプレーに対して、「ボールって、捕った人はどこへ投げてもいいんですか」、コーチャーに立っている選手に対して、「あの選手はどうしてあそこに残っているんですか」という質問には、答えるほうも頭を抱えてしまうだろう。これじゃ、どうしたら得点になるのかもしっかりと理解していないのではないかと思う。

 こういうレベルの取材記者も一緒になって夏の大会の取材が行われるのだ。これが、日本を代表する3大紙の記者なのだから、こっちは開いた口がふさがらない。
 きっと成績優秀な学生だったのだろうけれども、野球に関して、せめて最低限の勉強くらいはしてきてほしいと思う。ボクなんか、新聞社に入りたくて仕方がなかったのに、入れてくれなかったんだから…と、今でも28〜9年も前のことを思い出して、悔しがってしまうくらいなのだから。新聞社と野球って、切手も切れない縁があるということくらい認識してほしいんだけれどもなぁ。

 ただ、今はこういうレベルの記者も含めて高校野球の取材が行なわれていくというのも現実だ。常葉菊川の監督が取材記者にセクハラということで週刊誌に書き立てられ謹慎に追い込まれた。だけど、あながち記者側にも落ち度はあったのではないかと、ボクなんかは勘ぐってしまうのだが…。


5月6日(休)
春季静岡県大会 3位決定戦・決勝(静岡草薙球場)

 韮   山  210 000 000=3
東海大翔洋 110 102 03X=8
 
常葉橘 102 000 203=8
興  誠 000 000 000=0

 準々決勝で常葉対決で王者菊川に大勝した常葉橘が、その勢いでそのまま春の静岡県を制した。常葉橘は特待生問題で揺れていた昨年の春も県大会を制しており、2年連続優勝となった。しかも、この日は17安打で8得点を奪う快勝だ。しかも、エース庄司君は小気味のいい投球でほとんど危なげなく、6安打で完封し安定しているところを示した。それでも、小林正具監督は、「2連覇は嬉しいし評価したいと思いますが、安打数の割りに得点は少ないし、夏を見据えた場合これでいいということはありません」と、悲願でもある夏の甲子園出場へ向けて気持ちを引き締めていた。

 常葉橘は初回、2死から仁藤君が中前打で出るとすかさず二盗、山口君が左越二塁打してあっさりと先制。3回には、1死で中前打の石川君を置いて仁藤君が左翼へ2ランして主導権を奪った。巧みな腰の回転で上手に運んでいった本塁打だった。さらに常葉橘は7回にも仁藤君の二塁打などで満塁として小泉君の左越二塁打で加点。9回にも5安打で3点を追加した。


 興誠の江越投手は、3回の本塁打以降立ち直りかけたものの、7回に掴まるとやや集中も切れてしまった。打線も庄司君に押さえ込まれた感じであまりいいところはなかったものの、一番高井君のシュアな打撃は光った。

 3位決定戦は秋季大会のように東海大会の出場権がかかるというわけではない。そんなこともあってか、東海大翔洋は先発全員が2桁の控え選手という思い切ったものだった。また、韮山も序盤から積極的に選手交代を行い、エースナンバーをつけた神谷君を除く登録19人をすべて使い切った。

 ということで、なんだか練習試合の2本目の試合みたいな感じになってしまったが、NHKの静岡局はしっかりと中継していた。地場に根ざした地方局というのは、こういう形でもっと高校野球を中継して行けばいいと思っているので、試合内容はともかく、こういう試合があるのだということを公共の電波で伝えることは悪いことではないと思う。


 序盤は打ち合いというか、点の取り合いになった。4回に翔洋が相手失策で同点とする。スコア上は競り合いとなり、6回に翔洋の石原君、後藤君というこの試合での中軸の連打でリード。8回にも石井君をリリーフした渡辺君から失策からみで得点しリードを広げた。翔洋は川端君が完投した。
 静岡県が3位決定戦を行なうのは、県高野連の吉村耕司理事に聞いたところ、夏のシードの順番に関係するからだということだった。

 当事者でもある韮山の小雀浩一郎監督は、「公式戦という緊張できる場面を、多くの選手が経験できたことはいいことだと思います」と、歓迎していた。その小雀監督は、頭髪も自由という県内有数の進学校野球部の中で、選手よりも短く刈り上げている。その一方で口髭を伸ばしているのは、「髭がないと選手と間違われますから」と苦笑しながら説明してくれた。韮山OBでもあり走塁にこだわる熱血監督だ。4強進出は大きな自信であろう。



5月9日(土)
練習試合(紅葉川高校グラウンド)

 紅 葉 川  100 302 406=16
東京成徳大高 010 000 010=2

 この週末は天候が崩れるという予報が出ていたが、その通りになってしまった。それでも、この日は江戸川区の紅葉川では午後から予定していた試合が1試合だけながら何とかこなすことができた。

 紅葉川は今年創立80周年を迎えるが、日本橋にあった時代からのもので移転してきてからは20年前後だという。グラウンドはライト側から中堅は非常に狭く特別ルールを設けざるを得ない。少し大きなファウルだと、すぐに出てしまうので学校の外にも1年生部員が邪球対策で控えていなくてはならない。それでも、そんな環境ながら才野秀樹監督が徐々に選手たちに高校野球らしさを注入して、昨春はベスト16入りして夏のシード権も獲得。確実にチーム力は上がっている。


 小雨の中の試合は、成徳の矢作君が4回に掴まり、リリーフした佐藤君も持ち味のカーブがもう一つ決まりきらず、思い切りのいい紅葉川打線に掴まった。紅葉川はエースの龍大地君が4回をしっかり投げ、一塁手から登板した木部君につないだ。三番手として投げた龍進悟君は2年生で大地君の弟だが、左腕から野茂ばりのトルネード式で思い切って投げ下ろしてくる。これで、タテの変化を覚えたら面白い存在になりそうだ。

「まだ、これからの投手だと思っていますが、楽しみです」と、才野監督も期待している様子だ。この龍兄弟がしっかり投げると、昨夏はシード校として迎えながら返って足元をすくわれてしまっただけに、今年に賭ける期待もあろう。

 この日は途中から雨も降り出したが、何とか1試合はこなせたのは経験という意味からもよかったのではないだろうか。才野監督は限られたグラウンドの中で、ローカルルールを設定しながらも、選手たちには1試合でも多く経験させてあげようという思いで試合を組んでいる。
 
 それよりももっとグラウンドに恵まれていない東京成徳だが、守りはしっかりとしていた。期待していた佐藤投手が持ち味のカーブが決まらず紅葉川打線につかまってしまったが、3人の投手で大量16失点は喫したものの、野選が一つあっただけで失策はなし。「とんでもない試合になってしまって申し訳ないです」と恐縮する石井英樹監督だったが、守りはしっかりしていた。限られた条件の中で地道に練習を積んでいるということは感じられた。


今週のエンドメッセージ
 春季大会は関東以南の各地では県大会から地区大会へと進んでいます。地区大会では、県外の強豪校に対して今の自分たちがどれくらいの力があるのかを試す格好の場として捉えているところが多いようです。
 春季地区大会ではじめて見るフレッシュな学校との出会いも、ボクにとっては楽しみのひとつとなっています。そうした中から、指導者の思いやこだわり、あるいは選手たちの取り組みへの姿勢をくみとって生きたいと思っています。そういう意味では、ボクにとっても、地区大会は新しい刺激の発見の場でもあるわけです。

2008年5月13日(火)
第278回

 今年の連休は概ね好天が続いて、春季大会もほとんどスケジュールどおり進行していった。
 毎年同じように過ぎていくのだが、当然ながらその内容は決して同じではない。だから毎日が面白いのだろうけれど、結果のみでスポーツを見るのではなく、そのプロセスを含めてスポーツを見ていくと、そこにはいつの時代にもそれぞれの思いが発見できるはずだ。それがまた、ドラマを生み出す。いつも、そんなスポーツ風景を追いかけて、微力ながらもスポーツの楽しさ素晴らしさを伝えていきたいと思っている。


5月4日(休)
春季埼玉県大会 準決勝(大宮公園球場)

浦和学院 000 000 001=1
市立川越 001 000 001X=2

武蔵越生 000 000 000=0
聖望学園 000 021 00X=3

 9回、1点を追う浦和学院は1死から島津君が一二塁間を破って出塁すると、森士監督はすかさず代走宇井君を送る。2死後、宇井君が果敢に二盗。その直後、追い込まれながらも五番三角君が詰まりながらも中前へもっていくと、二走宇井君が生還。さすが浦和学院と思わせる執念を見せる同点劇だった。

 しかし、今季の市立川越はそれ以上に勝負強かった。その裏、1死から室岡君が四球で出ると、高野君が送る。投手としてここまで好投してきた九番井口君はフルカウントから右前へ運び、二塁走者が帰って劇的なサヨナラ勝ちとなった。
 粘りの勝利にさすがに新井清司監督も喜びを隠しきれなかった。「嬉しいねぇ。あそこで井口がよく打ったよ。本当は思い切り引っ張れって言ったんだけれどもね、(右へ流して)オレの言うこと聞かないほうがいいのかな。まあ、あいつら勝手にうまくなってるからなぁ」と、周囲を笑わせながらも選手たちの頑張りを評価した。8年ぶりの関東大会出場となった。

 井口君は立ち上がりから3イニングは1人の走者も出さない完璧な立ち上がりだった。8回までで走者が二塁へ進んだのは5回に長谷川君に打たれた二塁打のみのだった。スライダーの切れはいいし、ストレートも低めに決まり、スーッと伸びてくる感じで安定感が感じられた。


 また、浦和学院の森投手も、前の試合での早期交代の屈辱から立ち直った。父親でもある森監督は、「前の試合で反省して自分なりに修正したんでしょう。今日はよく投げたと思いますよ。(打たれたのは)それ以上に相手が上だったということです」と、大(だい)君の立ち直りを評価しながらも、市立川越のしぶとさに脱帽していた。それでも、「今年のチームこそ関東大会に出場して経験を積ませたい」と、3位決定戦へ向けて闘志を漲らせていた。

 聖望学園はセンバツ準優勝の勢いが止まらない。今大会2試合連続延長サヨナラ勝ちで勢いに乗る武蔵越生に対しても、まったく危なげなく退けた。しかも、全国的にも注目されているエース大塚君を温存して、石田君と2年生の佐藤秀君の継投でしっかりと完封。投手陣の層も厚くなってきたことを示した。それでも、岡本幹成監督は石田投手に関しては甲子園で打ち込まれたダメージから完全に立ち直ってはいないという。逆にいえば、それでもこれだけ投げられたところに非凡さはあるともいえるのだろうが。

 聖望学園は5回、失策絡みで好機を作り、二死満塁から一番江藤君が右前打して二者を迎え入れる。武蔵越生の左腕根本君もここまで粘り強く好投してきたが、三回り目で掴まった。江藤君は俊足好打で、勝負強く格好のリードオフマンといえよう。6回にも聖望学園は二番手の松浦君の代わりはな、一塁手で四番に入っていた大塚君が二塁打すると、暴投で進塁し、原茂(はらも)君の三遊間をゴロで破る安打で加点した。中盤のチャンスに確実に得点できる聖望学園は、確実に甲子園で自信を持ったといえそうだ。

 ベンチも明るく、頭髪もとくに規制はしていないのが聖望学園の特徴でもある。「面白いもんで、髪もボウズにせいなんて言わんで放ったると、勝手にボウズにしよるんよ。しかも、不思議と毎年1人か2人床屋の上手いやつがおって、そいつが皆の頭刈ったりしてね。だけど、オシャレボウズかどうか知らんけど、真ん中少し高くしたり、髪立てたり、工夫しよるんですわ」と、岡本監督は独特の関西弁でチームの雰囲気を語ってくれる。この岡本節がチーム内にも明るさをもたらしているのではないだろうか。
 こういうチームが乗ってくると、やはり強い。力がムードによって倍化されていくのである。
 

5月5日(祝)
春季栃木県大会 準決勝(県営運動公園球場)

作新学院 001 100 101=4
 栃 木 工 000 200 102X=5

宇都宮工 111 000 100 000 1=5
宇都宮南 010 001 011 000 0=4 (延長13回)

 さすがに準決勝らしい試合が2試合続いて充実していた。今にも降り出しそうな曇天だったが、選手たちの熱気が雨雲を吹っ飛ばした。

 栃木工は9回1死一三塁で九番壁谷君が気力で一二塁間を破って土壇場で再び同点。さらに一二塁から大森君の一打は二ゴロ。併殺で延長かと思われたが、一塁送球がわずかにそれる。その間に、代走で出ていた福元君が迷うことなく三塁ベースを蹴って本塁へ走り込んできた。身長150cmそこそこの少年野球選手のようにも見える福元君だったが、何の迷いもない好走塁だった。日向野久男監督の起用に見事に応えたといっていいだろう。


 栃木工の板橋投手は決して球威があるというタイプではないものの、度胸のよさが持ち味といっていい。リズムよく自分のペースを作っていくことが巧みだ。高校野球の投手は工夫次第で何とか投げられるのだということのお手本のようでもある。
 試合は追いつ追われつで、栃木工は4回、中三川君が左翼に
塁打を放って追いつく。7回、作新学院が鈴木健君の左翼へポトリト落とす二塁打でリードすると、その裏すぐに2死三塁から粘り強く大森君が内野安打して同点。9回は作新が三番松崎君の左前タイムリーで突き放し、このまま逃げ切れるかと思われた。しかし、それ以上に栃木工が粘りを発揮したということである。


 栃木工のサヨナラ勝ちの余韻を引きずりながらプレーボールとなった試合はもっと接戦となった。9回裏に宇南が2死三塁から一番清水君が執念で中前打して同点。18イニングで「1」が両チーム四つずつ入って4−4のまま延長となった。宇南は8回から三番手として小笹君が、宇工は8回1点差とされたあとで町田君が大谷君をリリーフしていた。延長に入ってこの両投手がともによく投げて、「もしかしたら15回まで行ってしまうのではないか」と思わせるくらいの粘りの投球になった。

 12回裏宇南が併殺で終わると、いいムードで13回を迎えた宇工は一番からの好打順。露久保君が初球を狙い右中間を破って二塁打。大出君のバントは巧みに転がって安打となる。すかさず盗塁して無死二三塁となるが、ここで小笹君が踏ん張って二者連続三振。これには宇工スタンドからも溜息が漏れたが、振りが鋭く当たっている五番中能(なかよし)君が会心の左前打してついに均衡を破った。ここは敬遠でもという考え方もあったかもしれないが、篠崎淳監督は、ここまで粘って投げてきた小笹君に賭けてあえて勝負した。結果として中能君が打ったのは、彼の気持ちが勝っていたということであろう。中能君はこの日2四球と3安打、7回にはリードを広げる中犠飛をきっちりと打っているなど、確実な打撃ができていた。リードもよく好捕手である。


 宇南は先発の晴山(はれやま)君が制球に苦しみ、球も走らず1〜3回まで押し出しも含めて3イニングで6安打4四球というのは誤算だったろう。しかし、エース山井君に続く投手として、センバツではベンチ入りしていなかった二番手高松君、さらに小笹君が粘りの投球を見せたのは夏を見据えた場合、大きな収穫だったであろう。

 また、宇工もエース大谷(おおや)君に続く投手として町田君の好投は大きかったであろう。ただ試合としては大森一之監督も序盤の好機にもっと点を取っておけば楽に進められたことを反省していた。

今週のエンドメッセージ
 テレビドラマで、『ROOKEIS』や『ごくせん』が受けています。いずれも、現実にはほぼありえないように設定の学園ものです。それらに限らず、『金八先生』や『スクールウォーズ』、『ヤンキー母校へ帰る』など教師を主人公としたドラマは一応に受けがいいものです。それは、教員という仕事が直接人間と接する仕事だからでしょう。そして、人に対して影響力の強い仕事だからでもあるのでしょう。
 ただ、現実の世界では、教育の現場は親も含めて、自分のことばかりしか見ていない人が多くて、ドラマのように行かないことも多いようです。自分の側を省みずに批判のみをする世の中の流れが表れているところもあるようです。教員は、以前より確実にやりにくくなっているのも確かでしょう。それでも、多くの教員、指導者たちは自分が子どもや若者に与える影響力を信じて励んでいるのでしょう。自分の思いを信じて、頑張ってほしいと思います。

2008年5月6日(火)
第277回

 毎年のことながら、この時期は可能な限り多くのチームの試合を見ることにしている。とくに、高校生は一冬越して大きく成長することも少なくない。秋に見たチームがどれだけ成長したのかということを見るのも楽しみだ。なかには大化けして、一躍注目選手になるなどということもある。
 また、春季大会で初めて試合を見て、好チームだなという印象を残してくれるところも夏の注目校になっていく。そんな発見も楽しみな春季大会だ。


5月1日(木)
春季千葉県大会 準々決勝(千葉県スポーツセンター野球場)

東海大望洋 001 000 000=1
 東 総 工 000 000 000=0

 市 立 柏 200 230 0=7
市立船橋 000 000 0=0 (7回コールドゲーム)

 緊迫した投手戦は、東海大望洋が3回に何とかもぎ取った1点を守って逃げ切った。
 この回の東海大望洋は1死から一番田島君が右前打で出ると二盗。2死二塁から三番佐久間君が左前打して田島君がホームイン。佐久間君の気持ちで打ったタイムリーだった。この1点を佐々木投手が切れのいいスライダーを駆使して、相手打線を4安打に抑えて守りきった。

 昨春はベスト4、夏はベスト8。昨秋もベスト4と一躍県内の上位常連校にのし上がった東総工。県内の新型ハリケーンと称する人もいるくらいだ。そんな東総工を率いるのが就任4年目の迫屋昇二監督である。まったくの無名校を一気に注目校に作り上げた手腕は高く評価されている。


 まだ、全国どころか関東でもあまり知られていない存在だけに、今春は関東大会に出場してアピールしたかったところであろう。「ここまで来たら、やっぱり勝ちたかったですよ。ただ、エースの高橋佑があまり投げられる状態ではなかったしですから…。でも、0点じゃ勝てないですよね。ウチの子たちは1点でもリードされるとどうしてもダメでね、夏へ向けてメンタル面を強化していかないといけません」と、必ずしも万全ではない状態での戦い方で新に課題を見出していた。


 エース高橋君に代わって先発したのは四番の菱木君だった。左腕から歯切れよく投げていた。高橋君は5回途中からリリーフして以降を0に押さえたのはさすがだった。また、プロ注目の捕手杉山君はこの日もマークが厳しくて2四死球と2打数0安打。プレッシャーとの戦いにもなっている。もっとも、リード面や強肩ぶりは非凡なところを見せていた。

 この日はもう1人、プロのスカウト注目選手がいた。市立柏の松村投手である。秋から下半身が一回りも二回りも成長。球威も一気に増していた。まさに、一冬越して大きく成長する見本みたいな投手だ。180cm以上の長身からの投げ下ろしで、角度もあって打ち辛そう。

 打線も好調で、初回に大関君が左翼へ2ランして主導権を握る。大関君は4回、5回にも左翼へいずれもタイムリーとなる二塁打を放ってこの日は5打点と大活躍。福島紀和監督は、「出来すぎですね。今日は3点勝負と見ていましたから、松村には3点以内に押さえろと、打線は何とかして4点5点とろうと言ってきました。大関は気持ちも強い子で、ここ一番で頼れるところを見せてくれました」と目を細めた。関東大会へは、「ここまで来たら行きたいですよ」と意欲を見せていた。
 

5月2日(金)
春季埼玉県大会 準々決勝(上尾市民球場)

浦和学院 001 013 002=7
市立川口 100 400 000=5

 八 潮 南 000 300 000 00=3
武蔵越生 100 000 020 01X=4 (延長11回)

 一時は5−1と浦和学院に対して4点リードした市立川口だった。しかし、最後に浦学の底力を見せつけられる形になった。それでも、市川口としては、全国的にも注目を浴びているエース高木君が故障上がりということで温存。その中で浦和学院にこれだけの試合が出来たことにはむしろ夏へ向けての収穫という捉え方だった。長井秀夫監督も、「最後はへばりましたけれど、山中が投げきってくれたことが大きかったです。選手たちには大きな自信になっていると思います」と、昨秋の県大会は川口青陵にコールド負けしたチームだっただけに、一冬越したチームの成長ぶりを評価していた。

 初回、伊藤君のタイムリー打で先制した市川口は、3回に追いつかれるものの、4回1死一塁で勝負強い富塚君が右中間を破ってリード。さらに相手失策でチャンスが広がると九番の山中君が気力で右越三塁打してこの回4点。先発の森君をマウンドから引きずりおろした。
 しかし、浦和学院5回に内野安打で1点を返し、6回は福士君、リリーフしていた高島君と下位打線の連続に塁打でじわじわと返していく。さらに、三番島津君の気力の内野安打で同点となった。
 そして9回、浦和学院は山谷君の二塁打と三角君の中前打で突き放し、さらに長谷川君も左前打して後逸も誘い2点差となった。

 武蔵越生は2試合連続の延長戦サヨナラ勝ちで勢いのあるところを示した。
 初回に武蔵越生は光野君の三塁打とワイルドピッチで先制する。追いかける八潮南は4回に2四球で一二塁として六番浅野君の左越二塁打で逆転。さらに、八番旭君のタイムリー打で三塁へ進んでいた浅野君も生還。このりーどを八潮南は自身のバットで逆転した浅野君が歯切れのいい投球で抑えていた。このまま逃げ切れるかと思われたが、8回に武蔵越生の主砲根本君が2死二三塁から同点となる二塁打を左翼にもっていった。根本君は身体もあるが、好投する浅野君の配球を巧みに呼んで外のボールを上手に運んでいった技ありの一打だった。

 試合はそのまま延長に入ったが、10回2死二三塁で根本君というところで八潮南はあえて勝負して今度は左飛に打ち取った。浅野君の強気の投球が勝ったということである。しかし、続く11回に1死二三塁から、途中出場の政岡君はややつまり気味ながらそれが返って幸いして二塁内野安打となった。その間に7回からリリーフのマウンドに立って好投していた三走東風平(こちんだ)君が生還。サヨナラとなった。


 さすがに、八潮南はがっくりとしていたが、このところ毎年のように好チームを作り上げている。新井茂監督は、「10回、相手の四番を打ちとっていいムードになったんですから、その次の回の攻撃が3人であっさり終わってしまったのが残念でした。このあたり、チームとしてはまだまだですね」と、試合の流れを悔いていた。それでも、浅野君の安定した投球には、ある程度の感触は得ているという感じだった。

 
今週のエンドメッセージ
 毎年、ゴールデンウィークはどこかで天気が崩れることが多いのですが、ことしは大崩れしないですみました。連休が終わると、どこの学校でも一年生たちも学校に馴染んできて本格的に部活動に取り組んでいくことになるでしょう。15歳から18歳までの大事な十代、青春時代です。悔いのないように過ごしていってほしいと思います。「十七歳は一度だけ」なのですから(おっと、これは古いねぇ。高田美和なんてわかる人のほうが少ないんじゃないだろうか)。

2008年4月29日(火)
第276回

 ゴールデンウィークは、関東地方ではほとんどの県で春季大会の準決勝から決勝が行われることになる。関東大会は2週間後の5月17日から山梨県で開催される。
 すでに組み合わせも代理抽選で決定しており、あとは順位であてはめていくだけだ。昨年は特待生問題などで有力校がいくつか辞退するなど揺れた春季大会だったが、今年はセンバツベスト4の千葉経済大附と準優勝の聖望学園が推薦出場することになっており、出場校数も多く盛り上がりそうだ。甲府市の小瀬スポーツ公園はやや不便だけれど、多くの高校野球ファンが集結するであろう。
 また、東海大会は23日から静岡県で3日間。近畿大会は週末のみ2週間にわたって、京都市の西京極球場で行われる。



4月20日(日)
春季愛知県優勝大会 3回戦(熱田球場)

中京大中京 000 032 002=7
 東   邦 100 100 100=3

愛産大工 000 000 0=0
 享  栄 420 102 X=9 (7回コールドゲーム)

 県内を代表する名門校が相次いで登場して、好天の日曜日多くの高校野球ファンが詰め掛けた。何せ、名古屋市内私学4強のうち3校が集合しているのだから見ごたえがある。
 
 愛知県内では歴史的黄金カードといってもいい中京大中京と東邦の試合。ちなみに、夏は過去9回甲子園をかけて決勝で対戦している。今年のチーム力としては1枚上回る中京大中京が甲子園帰りの貫禄を見せて中盤に逆転した。ただし、その逆転が東邦投手陣の四球による自滅だったことが、内容的にはやや残念だ。ベンチでしきりに声をかけていた森田泰弘監督もさすがにがっくりしていた。


 東邦は予定していた投手陣がケガで投げられなくなったということも痛かったようだ。これに対して、中京大中京は夏を見据えて左の竹内君、右の細川君という両輪が安定している。この日もその継投で押さえた。

 7回に無死満塁のピンチでマウンドを踏んだ細川君は、連続三振のあと、四番野々川君に安打されて1点を許したものの、それ以外はぴしゃりと押さえた。甲子園では初戦で明徳義塾に延長の末敗退。やや不本意な結果になったが、それをバネにさらに練習を重ねてこの大会に臨んでいる。「正直、練習のし過ぎで選手たちはややへばっているところもあるのですが、よく頑張ってくれています。今年は(夏の大会の)始まりが早いですから、例年よりも早めに追い込んだ練習をすることになるでしょう」と、自主性を重んじる大藤敏行監督は、選手たちの切磋琢磨していく姿勢に目を細めていた。


 前評判が高い享栄は、前日は好投手伊佐地佑紀君を擁する津島北に対して、毎回得点の5回コールド19-0というとんでもないスコアで快勝した。そして、この試合でも愛産大工の小林君を初回から攻めて、三番の好打者岩本君の中前タイムリー打に藤田君の好打や失策も絡んで4点。2回にも一番福島君以下の3連打などで2点。早々と試合の方向性を決めた。

 このリードを小幡君が丁寧に投げて、佐藤友昭監督の思惑通り、注目の左腕エース八木亮祐君を温存して勝ち上がっていくことができた。マウンド経験の少ない背番号9の小幡君は、「当初は私の思っていたのと違う配球でいくから心配していたのですけれども、3回頃から持ち味のスライダーを上手に使えるようになり安心しました」と佐藤監督は振り返っていたが、このあたりは岩本捕手の判断とリードもあったのであろう。岩本君は小柄な捕手だが、送球も速いし打者としても腰の回転のいいスイングで3安打4打点。頼れる主将ぶりを示していた。


 享栄は、期待されながら昨秋の県大会は初戦で成章に敗退。その成章が21世紀枠で甲子園出場し活躍。その悔しさを胸に秘めて挑む今大会である。まずは東海大会進出。そして、その実績を夏へ向けて生きたいという展望である。彦坂明人部長は、「今年は(夏の大会の)始まりが2週間早いですから、調整が難しいんですよ」と言いつつも、いい感触を得ているという感じであった。



4月26日(土)
春季東京都大会 準決勝(神宮第二球場)

 帝 京 021 002 120=8
日大二 100 100 000=2

日大三 002 001 005=8
国士舘 220 000 000=4

 今春の東京都大会はきれいに東西2校ずつがベスト4に残って、東西対決になった。しかも、上手に東と西が1校ずつ決勝に進出して関東大会出場を決めた。終わってみれば、西は日大三、東は帝京が第一シードということになり代わり映えしないといえばそうだが、やはり両校が安定した力を示したということであろう。
 
 ここまで快進撃を続けてきた日大二だったが、帝京には後半力の差を見せつけられることになってしまった。「力負けですね。やっぱり、まだ関東大会へ行けるチームじゃないということですよ。でも、むしろここまでよくこられたと思っています」と、田中吉樹監督はさばさばとしていた。

 初回、日大二は米持君の立ち上がりを攻め、四球の岡部君を二塁において本郷君の左中間二塁打で先制。さらに澤田君も安打してチャンスが広がったものの、エンドラン失敗で三振併殺。2回に帝京はすぐさま長瀬君の左翼線二塁打で同点、九番米持君の三塁内野安打で逆転した。さらに、3回は先発澤田君のカットボールが甘く入ったところを高島君が完璧に捉えて左翼へソロ本塁打。


 それでも日大二も抵抗し、4回山田君の中前打で二塁走者福島君が好スライディングで生還。1点差とした。

 何とか食いついていきたい日大二だったが、6回帝京が1死満塁から杉谷君が会心の左中間二塁打して2点。7回にも平原君の一発が出て澤田君も力尽きた。8回にも2点を失った。終わってみたらやはり帝京の強さが光った。

 日大三も勝負強さを示した。1点を追う日大三は小雨の降り出した9回、一番からの好打順でまず田中洋平君が一二塁間を破って出ると、続く高橋君が左翼線へ運んで二三塁。好打者竹内君は倒れたものの、四番田中裕君は敬遠気味の四球で満塁。五番はここまで自分の打撃が出来ていなかったという岡君だったが、文句のない左犠飛を打ち上げて同点。息つくまもなく田代君が右中間をライナーで破り二者を迎え入れて逆転。なおも中嶋君、大塚君もここまで粘ってきた丸山投手に襲いかかって大量5点。鮮やかな日大三の逆転劇だった。

 序盤に球が思うように行かず2点ずつを失い苦しんだ関谷君は、3回以降スライダーが要所に決まるようになって持ち直した。粘りの投球をしていく気持ちが打線にも通じた逆転劇といっていいだろう。

 昨秋は東亜学園に不本意な敗退。試合内容もよくなかったということもあって小倉全由監督が珍しく声を荒げていたくらいだったが、一冬越えて選手たちはたくましく成長した。「本来は力のない子たちじゃないんですよ。9回はそれぞれが、思い切って自分の打撃をしていった結果が得点に結びつきました。ただ、欲をいえば中盤でもっと早く追いつける場面はあったはずです」と、厳しく見つめていた。それでも、応援に来ていたチアガールの子たちが前を横切ると、一人一人に「ご苦労さん、雨の中ありがとう」と声をかけねぎらっていた。そのときは、勝負師の表情から優しいオジサン先生の顔になっていた。

今週のエンドメッセージ
 今年の大型連休は好天が続くという、高校野球ファンには嬉しい予報が出ています。

 この時期、高校野球だけではなく、他の部活動でも大会が相次いでいます。運動部の高校生は、忙しい時期です。だけど、安易な遊びが多い中、何かに熱中して大事な十代の時間を過ごすということは間違いなく、その後の人生に好影響を与えてくれる何かをもたらしてくれるはずです。
 部活動をしようかどうか迷っている新入生がいたら、まだ間に合います。迷わずチャレンジしてみましょう。

2008年4月22日(火)
第275回

 春季大会も各地でそれぞれ佳境に入りつつある。
 春季大会の楽しみは、注目しているチームが一冬越えてどのようにチームを作り上げてきたのかということを確かめる場でもあるが、新しい好チームを発見する場でもある。
 とくに、ボクのような立場としては、選手個々もさることながら、好チームを発見して、その指導者がどのような思いでチームを作っていこうとしているのか、それを見出すことも楽しみなのだ。



4月16日(水)
春季千葉県大会第3ブロック代表決定戦(市川市国府台球場)

東京学館浦安 000 011 000=2
 浦   安   000 000 12X=3

松戸秋山 000 000 0=0
市立松戸 011 003 2X=7 (7回コールドゲーム)

 浦安のひたむきな試合ぶりが目についた。シートノックなどから見て判断すれば、力としては一枚上かと思われた東京学館浦安に対して、辛抱して終盤に逆転という試合運びは見事でもあった。その原動力となったのは平河内君の粘り強い投球だった。

 2年生と3年生で丁度20人という浦安はチームとしてのまとまりもいい。5回、6回といずれも失策絡みで失点をするが、そこでズルズルと崩れてしまわないで踏ん張った。大塚和久監督も、「気持ちを作っていこうというところから始めたチームなんですが、失策でも崩れなかったというのは、ようやく何とかなってきたところかなという気がしています」と言いながら県大会出場を素直に喜んでいた。


 平河内君は球威があるというタイプではないが、丁寧にコーナーをついて辛抱の投球だった。こうして平河内君が踏ん張りながら、7回にスクイズで1点差とすると、8回、1死一三塁が盗塁失敗で2死三塁となりながら、二番鈴木和君が左中間へ運んで同点。さらに四球で佐々木将司君から長谷川君につないだが、連続死球になってしまい押し出し。浦安は思わぬ形で決勝点が転がり込む形になった。


 投手としては高いレベルにある学館浦安の佐々木君は力のあるボールを投げ込んでいた。6回までで被安打1という数字にもそれは表れていた。鈴木君に打たれた同点タイムリー二塁打も当たりとしては打ち取ったものだった。ただ行った方向がよかった。
 また、高野捕手は強肩で、捕球から送球への動作も素晴らしく速かった。今年の千葉県には、木更津総合の地引君、東総工の杉山君など好捕手が多い。高野君もその一人に加われるくらいの素材力である。

 
 千葉県内中学野球の強豪、常盤平中の卒業生が多くいる同士の松戸対決となった試合。結果としては、地力のある市立松戸がじわじわと点差を広げてコールドゲームとした。エース沼澤君は一冬越して下半身が安定してきて、球威も増した。相手の一番野波君、四番秋田君らかつてのチームメイトらを完全に抑え、7回で被安打2。嶌田孝監督もこの日の沼澤君の出来には満足げだった。県内でもかなり上位のレベルに入る投手といえるのではないだろうか。

 市立松戸は2回に笠川君の左中間三塁打と東海林君の左前打で先制。3回も、死球の走者を一番工藤君が左中間に塁打で返した。そして、6回は、濱洲君が右翼へ完璧なソロを放ってから勢いづいた。秋山には外野手が追いつきながらも落球が相次ぐということもあって点差が開いてしまった。

 松戸秋山の藤平秀幸部長は、「外野の落球はしょうがないですよ。むしろ、よく走って追いついたと思います」と、選手たちの精一杯のプレーであることを強調した。稲葉長彦監督も、「小宮(投手)は、粘り強く、自分の持ち味を出してよく投げたと思います」と、ミスはあってもむしろ、次の課題を見つけてプラス思考で夏を目指していく姿勢を示した。


4月19日(土)
春季愛知県優勝大会 2回戦(豊橋市民球場)

渥美農 000 001 000=1
 成  章 000 200 01X=3

東海南 000 110 000=2
 刈 谷 001 010 20X=4

 今春のセンバツに21世紀枠で出場を果たし初戦突破した成章。その甲子園後、最初の公式戦となった。
 甲子園では応援賞も獲得したが、そのときの菜の花をイメージした黄色のスタンドを思わせるジャンパーや帽子を着用している人も何人かいた。やはり、甲子園の思い出にも浸っていたい人たちもいるのだろう。

 しかし、選手たちはすでに夏を見据えて次へ向かっていた。糟谷寛文監督も甲子園から帰ってきて、選手たちの心が成長したことを素直に喜んでいた。「あれだけの場所で、普通に試合が出来たことは大きかったと思います。そして、帰ってきてからも選手たちも奢ることなく普通にやってくれていますし、一足飛びに上手くなったわけでもないし、監督が偉くなったわけでもありません。普通でいられることが何よりです」と、謙虚な姿勢は相変わらずだ。


 試合も成章らしいものだった。4回に1死から鈴木翔君が左翼手手前へ落ちる幸運な二塁打で出ると、四球で一二塁。重盗を仕掛けて二三塁としてから、丸山君の一打がポテン安打となって二者が帰った。8回には2死から小川君が三塁戦を破るに塁打で出ると、当たっている六番倉内君が左前タイムリー打して貴重な追加点を挙げた。


 甲子園以降足の張があるという小川君だが、この試合は当初の予定通り完投。6回には暴投で1点を失って、スタミナにも不安を残している状況とはいえ、8三振4安打はさすがだった。負けない投球はしっかりと出来る投手だということを改めて示した。


 渥美農の食い下がりも見事だった。河合亮君はカーブのコントロールもよく、度胸よく打者の内側をついていた。大崩れはしないという印象である。まだ2年生ということで、今後の伸びシロも期待できそうだ。


 刈谷は変則の右横手投げで、ときに帽子を飛ばしながら押し込むように投げ込んでくる坂部君と、オーソドックスな右上手投げ早川君の系統で巧みに東海南打線をかわしてシード入りを決めた。この日は風もあって、7回、刈谷は2死から九番石川君が風安打で出塁すると、清水君も内野安打でつなぎ、鳥居君の高々と上がった内野飛球が風に流されて野手がグラブに当てながらポトリ。二者が帰ったが、これが決勝点となった。

 5回にも刈谷は2死二塁から鳥居君が遊撃手頭上へぽとりと落ちる風安打で同点としている。この試合に限れば、ことごとく風が刈谷に味方した形になった。東海南は4回に七番戸田君の一二塁間を破るタイムリー打、5回には長谷川君、古久根君の二塁打といい形で確実に点を取っていただけに風が恨めしかった。山本投手もいいリズムでストライクを先行させていた。ベンチも元気があり、好チームという印象を残してくれた。

 
今週のエンドメッセージ
 このところ天候の変化が激しい日が続きます。
 大雨が降ったかと思ったら、一気に暑くなったりで、選手たちもコンディション調整が難しいでしょう。また、大会役員の人たちは、グラウンド整備や運営、雨で流れた場合の日程調整など、それはそれでいつも天気予報とにらめっこで大変でしょう。先週末は、夏のように暑い日でした。

2008年4月15日(火)
第274回

 センバツが沖縄尚学の優勝で幕を閉じたかと思ったら、全国各地ではもう春季大会真っ盛りである。四国、九州ではもうすでに県大会が終了して、春季地区大会出場校が決まっている。九州に至っては組み合わせも決まり、早くも次の戦いを見据える体勢になっている。こうしてみると、本当に高校野球は休むことなく忙しい。
 教員の人事異動もあって、落ち着かないところもあるだろうが、それも公立校の宿命と受け止めて対応していかなくてはなるまい。そんな対処に追われている学校もあるようだ。


4月12日(土)
春季東京都大会 4回戦(神宮第二球場)

早稲田実 002 000 0=2
成立学園 040 042 X=10 (7回コールドゲーム)

 日 大 三 113 010 000 3=9
東亜学園 012 020 100 0=6 (延長10回)

 東京都大会でここからの戦いは、いずれも夏のシード権を獲得したということで一安心しているということもあり、監督たちはそれぞれのチーム事情に合わせてさまざまな試みをしてくることもある。第二の投手を育てるための采配や、思い切った選手起用をすることもあるだろう。ただ、いずれにしても公式戦であり、その緊張感を味わうことによって選手はまた大きく成長していくものである。

 成立学園にとっては、一昨年の夏の全国覇者早稲田実をコールドゲームで倒したということは間違いなく大きな自信となっているであろう。
 2回に成立学園は2四球でためた走者を七番岩佐未来君の左中間二塁打で帰し2点を先取。さらに、続く高木君が左翼へ2ランしてこの回4点。
 3回に大野君の2ランで追い上げられるものの、5回にも二番の巧者太刀川君が左前打すると大竹君のバントが安打となりチャンスが広がった。2死から、六番長谷川君が浅めの右翼手の頭上を破る二塁打で二者を迎え入れる。さらに、中野君をリリーフした阿久根投手の代わりはなを叩いた岩佐未君が左翼へ2ランを運びこの回再び4点。完全に主導権を握った。阿久根君は斎藤佑樹投手を思わせる投球フォームだったが、ばっちりとタイミングを合わされた。


 さらに成立は6回にも1年生投手小野田君の3四球を足場に2点を追加。守っては、岩佐海斗君が187cmの長身から角度のあるストレートを投げ込み好投。タテのカーブも大きく曲がっていて効果的だった。時に外国人投手のように身体が一塁側に倒れるものの、それほどバランスを崩しているという印象はなかった。

 名前でも推測がつくように、岩佐君は双子の兄弟である。この日の成立は岩佐兄弟で早稲田実を粉砕したといってもいいだろう。率いる菅澤剛監督はかつて岩倉が全国制覇を果たしたときの二塁手で準決勝では劇的なサヨナラ本塁打を放った勝負運の強い男でもある。その後、青山学院大で活躍して、恩師の望月前監督を引き継ぐ形で成立学園を指導している。今年は、一躍東東京の注目校として飛躍しそうな勢いだ。


 日大三は延長になって苦しみながらも、東亜学園に何とか昨年秋の借りを返した。ただ、試合内容としては決して満足の行くものではなかったであろう。5回には日大三としては珍しい内野の連続失策もあったし、投手陣も9四死球を与え、ピリッとしなかった。小倉全由監督は勝っても苦い表情だった。それはそうだろう。序盤の4点のリードをも守り切れなかったし、内野の失策や送球ミスも目立った。

 日大三らしさを感じさせたのは初回、死球の走者を三番竹内君があっさりと長打で返したのと、10回に1死から竹内君が左前打して内野ゴロで二進し、当たっている岡君四球後の初球を田代君が狙い打ったあたりくらいだ。あとは、2回田代君の右翼ソロ、3回岡君の3ランという一発攻勢だった。


 東亜学園は、失策に乗じて追い上げ、八番中島君の一二塁間安打で1点差、7回に木田君のテキサスタイムリー安打で同点としたが、続くチャンスであと1本が出ずついぞリードしきれなかったのが惜しかった。先発亀谷君は3回につかまったが、その後をリリーフしたエースナンバーの森君は10回こそ3点を失ったものの、そこまでは丁寧に四隅をついていこうという姿勢を示し、よく踏ん張ったといえよう。

 
 この日、気になったのは、日大三の選手が四球や送りバントのあとにバットを放り投げるシーンが目立ったことだ。また、早実の投手陣も内角を突くのはわからないでもないが、意図的みたいに危険球まがいの内角攻めも気になった。日大三や早稲田実は東京を代表する名門校だけに、そのあたりも含めて整えて欲しいと思う。


4月13日(日)
春季神奈川県大会 2回戦(等々力球場)

川崎北 030 030 010=7
橘学苑 000 001 002=3

武 相 100 001 151=9
城 郷 000 200 010=3

 じとじととした春雨に見舞われて、いくつかの会場が中止になってしまった神奈川県大会だった。それでも、人工芝の等々力球場は第一試合の途中に約40分の中断こそあったものの無事日程を消化することが出来た。

 昨年の秋季県大会でベスト4に進出と大躍進した川崎北。一躍県内の公立の雄になったが、その勢いからすれば、いささかもどかしい試合となってしまった。それ以上に佐相眞澄監督は歯がゆい思いでいたようだった。「(バットが)振り切れていないのかなぁ。(外野手の頭上を)越えたと思った打球が全部失速して捕られちゃっていますよね。何だか、気持ちがもやもやして消化不良ですね」と、9回に平凡な内野ゴロの失策から2点を失ったことも含めて、渋い表情だった。

 とくに、打撃のチームとして自他共に認めるだけに、7点を取ったとはいえ、会心の当たりがさほどなかった打線はこの日の天気のように湿っていた。それでも、2回は織田君の右越三塁打などで3点。5回には雨で中断明けに五番に座る息子の健斗君の左前打などで3点とチャンスに1本が出てつながっていったところはさすがだった。


 昨年夏から秋の健闘もあってか、今春の新入部員は52人で県内どころか全国でも有数の大所帯になった。それだけに、チームとしてのアイデンティティもしっかりと作っていかなくては、バラバラになりかねない。そんな難しさも背負いながら、最激戦区の神奈川で本気で甲子園を目指す公立校としてのロマンをかけた思いをぶつけながら、新たな勝負がスタートしたともいえようか。
 昨年、間違いなく神奈川県に起爆剤を投げ込んだ川崎北。今季の戦いぶりこそ、その真価が問われそうだ。

 また、女子校から共学化して3年目の橘学苑。学校活性化の核として野球部強化を掲げてもいるのだが、県大会で戦えるチームとなってきた。先発した金井君、背番号4をつけて二塁からリリーフした植木君、三番手となった高長根君らがそれぞれ、工夫をしながら粘り強い投球をしたのは評価されていいだろう。守りも悪天候にもかかわらず大崩はしなかったのは立派だ。


 武相はかつて甲子園出場を果たした時代の迫力にはまだ遠いものの、確実に復活の道を辿っているという印象だった。とくに、この日は粟ケ窪君が角度のあるストレートとカットボールのようなスライダーが切れ味がよく好投した。3失点はしたものの、自責点0は見事だ。7四死球はやや多いが、これもコースを丁寧についていった結果ともいえようか。また、酒匂君、鎌田君、平尾君のクリーンアップで6安打、7打点というのは、チームとしては打線がいい流れ方をしているということであろう。

 前日1回戦を勝ち連戦となった城郷は、先発した2年生左腕の飯山君が立ち上がり緊張して失策と3四球で押し出してしまったが、その後はよく踏ん張った。左腕独特のクロス気味のストレートを生かした緩急が投球の持ち味だった。

 7回まではよく踏ん張っていたが、8回四球と連続失策で崩れ、甘くなったところを鎌田君の三塁打など4連打でビッグイニングを許してしまった。「中盤までは何とか食いついていけたので、いけるかなと思っていたんですけれども、結果的には守りで一番心配していたところで失策が出てしまいました。攻撃では、(一番頼れる四番の)水口の前に走者をためられなかったのもよくなかったですね」と、鈴木裕監督は振り返った。15年間城郷を指導してきた鈴木監督はこの夏が最後となるという。一般企業に勤務しながら、熱い気持ちで公立校を指導してきた情熱家である。次の舞台を期待したい。


今週のエンドメッセージ
 好天の日があったかと思うと、突然寒い日があったり、雨が降ったりと不安定な天候です。私の地元亀戸では、19歳の女性がいきなり行方不明という事件がおきました。ウチの娘と同年齢だけに、ドキッとする事件です。こんなニュースも連日のように流されます。
 五輪の聖火まで、不安に駆られながらのリレーとなっていくようです。
 天気も、社会全体も不安定な世の中になってしまったのでしょうか。

2008年4月8日(火)
第273回

 4月は出会いの季節でもあるが別れの季節でもある。とくに公立学校では年度替わりで人事の異動が激しい。城東も、00年に大島から赴任し01年には甲子園にも導いた梨本浩司監督が広尾へ異動となった。この大会まで采配を揮うということで、負ければ最後の試合となる。
 梨本監督としてもまざまな思いのある城東だったろう。その最終試合が、図らずも昨夏の5回戦と同じ世田谷学園との対戦となった。昨夏は、城東が初回に2点を先取し、一旦は逆転されながらも1点ずつ返して逆転勝利。城東がベスト8進出を決めた試合だった。



4月2日(水)
春季東京都大会 1回戦(江戸川区球場)

 保  谷  100 000 000=1
城西大城西 002 100 00X=3

世田谷学園 300 010 000=4
 城  東  011 000 100=3

 初回、2死走者なしから死球と渡辺君の長打であまりにもあっさりと先制してしまった保谷。ところが、2回3回と満塁としながらもあと1本が出ず。逆に城西が3回に2死二三塁から三番柿間君が中越三塁打して逆転。さらに、4回にも五番南雲君が左翼へソロホーマーした。保谷はここで、先発信太君と一塁加藤君をスイッチ。左腕加藤君は以降粘り強くよく投げたものの、攻撃は無死の走者は併殺でなくなり、2死からは連打が出るというちぐはぐさで流れを呼び戻せなかった。

 試合後、長嶺功監督は、「監督がいけません、コメントなしだね。3点は投手の責任じゃないですから。相手の三番は警戒していたのに、はずしにいったところが真ん中に入って打たれましたね」と、残念がった。
 その柿間君は2本の長打を含めて3安打。中堅へしっかりとはじき返すシュアな打撃が光った。投げては松浦投手が走者を出しつつも尻上がりに調子を上げていった。元気のいい投球だった。かつては甲子園でベスト8にも進出した実績のある城西。今大会はブロック予選を勝ち上がっての出場となったが、チームとしてはしっかりとまとまっていた。

 昨夏のリベンジに燃える世田谷学園は一番茶原君がいきなり二塁打して気迫を示す。巧妙なバントで揺さぶると、三番岡本君の一二塁間タイムリー打で先制。さらにバントで二三塁としたあと、五番斉藤君の右越打で二者を迎え入れこの回3点。
 追いかける城東は2回からマウンドに登って関根君をリリーフしていた左腕長谷川君がバットでも活躍して二塁打で1点を返す。3回にも死球と相手失策で1点差として迫る。次の1点が勝負となったが、5回世田谷学園は1死満塁から岡本君の併殺崩れで1点を加える。これに対して城東は7回、2死一三塁から伊藤君の左前打で1点差。続く七澤君の二塁手頭上を越えた一打で二走加倉井君が好走して本塁を狙ったものの、砂田二塁手の好返球でアウト。攻守ともに見ごたえのあるプレーだったが、これが結果的に明暗を分けた。

 城東の選手たちは8回頃からは涙を流しながらプレーしていた。梨本監督と過ごしてきた時間を思って感極まった選手もいたのだろう。悔しい敗戦とも相まって、城東の選手たちは夏の大会の敗戦のように泣きじゃくっていた。

 梨本監督も、「城東での監督としての試合が終わってしまいました。去年の夏のこともあって、相手の方が気持ちで上回っていたんでしょうか。先発は、秋からの形でしたから、パターンを崩す勇気はなかったですね。初回、3点取られたのが痛かったです」と、やや寂しそうに振り返った。それでも、最後は気を取り直して、「今後は、城東ともども広尾もよろしく」と白い歯を見せた。



4月5日(土)
春季東京都大会 2回戦(八王子市民球場)

 修 徳 200 000 020=4
紅葉川 000 000 000=0

日体荏原 000 000 010=1
安田学園 000 111 00X=3

 今年の4月は日によって寒暖の差が激しく、桜の花も急かされて咲いたかと思ったらもう葉桜になりかかってしまっている。風が吹くと、サーッと桜吹雪が舞って、周囲が桜の木で囲まれている八王子市民球場はまるで映画の一シーンのように美しい。そういえば、かつて『桜の園』(中原俊監督)という映画があったが、そのロケ地にもなっていた聖望学園(飯能市)がセンバツで準優勝をした。

 閑話休題、4月上旬に一気にベスト16まで出揃ってしまう東京都大会はこの時期が佳境だ。この日の八王子球場は皮肉にも東東京の4校が集結。しかも千葉に近い江戸川区と葛飾区の紅葉川と修徳は下町対決だ。才野秀樹監督が就任して5年目、紅葉川は確実に力をつけている。昨年はこの大会でベスト16に進出、初シードを獲得した。




 図らずも昨年敗退した修徳との試合になったが返り討ちに合い完敗。それでも、確実に点差は縮まった。「昨年に比べてチームの違いもあるのでしょうが、少しは差が縮められたかなと思います。選手たちの意識も上がってきていると思います。ただ、打てませんでした。冬の間はティを中心に打ち込みをやったんですけれど…」と、成果と課題を見つめていた。長い間中学の講師を務めながら、高校野球の監督を目指してきた苦労人らしいコメントだ。


 龍投手は立ち上がりに二つの失策絡みで2点を失ったものの、その後は丁寧によく投げた。従来のチームだったらそこで大崩れしてしまうところなのだが、それが持ちこたえられたのは、やはり才野監督も認めるチームとしての意識の成長であろう。野球部が頑張っていくことで、学校そのものも活気を取り戻しているという。才野監督は学年主任も務めているというから多忙だ。そんな中で好チームを作り上げているのは、やはり高校野球に対する強い思いがあるからだろう。

 受けて立った形の修徳も苦しんだ。昨年秋はブロック予選の初戦敗退。この大会は一次予選からの出場となった。昨春に就任して夏は決勝まで進めた鳥山泰孝監督も、この冬は辛い思いをしたという。

「高校野球の監督がこんなに苦しいものかというのを初めて感じました。ボクとしてはこのチームで何とかシード権を取って夏を戦いたいです」と、思いを述べる。というのも、丁度不祥事で謹慎を余儀なくされていた生徒たちが3年生になったチームだからでもある。「みんな真面目なんですよ。真面目すぎるくらいなので、去年の秋みたいにシュンとなってしまうこともあるんです。とにかく、このチームには勝つことが一番の薬です」と、結果を出していくことを求めている。


 その修徳は8回に代打松沢君の安打から動き出し、四球とポテン安打、荒川君のタイムリー打などで2点を加えた。このリードを森谷君から武内君とつないで完封した。


 7回を終わってノーヒットノーランを維持していた安田学園森谷君は、8回の先頭打者鈴木龍君に右翼へ本塁打されて、その夢は途絶えてしまった。しかし、角度のあるストレートが走っており、帽子を飛ばしながらの力投だった。9回にも、日体荏原の粘りにあったものの、最後は鈴木君から三振を奪い意地を見せた。
 安田学園は4回に八番長谷川君のタイムリー打で先制。5回も二番佐久間君の中前打で2点目。さらに、6回はスクイズという小技も織り交ぜて加点した。

 日体荏原の本田投手は168cm61kgという小柄で右サイドというよりアンダースロー気味の手の出方で、低めに球を集めて左右配球のの出し入れで好投した。力投型の酒井君との投げあいも対照的で見ごたえがあった。

 
今週のエンドメッセージ
 今年のセンバツは、僅差の競り合いが多い試合でした。とくに、ボクが滞在していた1週間で、1−0を5試合も見るという結果になりました。これも珍事といってもいいのかもしれません。飛ばないボールもあったのかもしれませんが、カットボールやツーシームといった変化球に投手の技術も向上したということもあったのではないでしょうか。このあたりの技術的な話は、機を見て、さまざまな人たちとも話していきたいと思っています。
 甲子園でロースコアゲームが多かった件に関して、それぞれの意見をお寄せいただければ、なお嬉しいです。

2008年4月1日(火)
第272回

 センバツ高校野球観戦でリニューアルされた甲子園に足を運んだ。
 確かに、これまでに比べて椅子と椅子の間隔が広がって長い時間の観戦もしやすくなった。それに、通路の確保もしっかりとできており、試合中の人のでは入りに関しても以前よりは随分楽になった。
 ただし、売店などはキレイになったのはいいのだけれど、まだ手順が定着していないので行列が出来やすいのだが、通路が以前に比べて狭くなっており、トイレなどのときにも必要以上に混雑している印象は否めない。



3月27日(木)
第80回記念選抜高校野球大会 2回戦(阪神甲子園球場)

平 安 030 000 000=3
成 章 000 002 000=2

 横 浜 000 100 010=2
北大津 000 401 01X=6

 21世紀枠代表で悲願の甲子園出場を掴んだ成章は開幕戦で駒大岩見沢を下して2戦目である。割いた出場を誇る平安に対して、素晴らしい粘りを見せて大善戦をした。
 2回に七番荒竹君の二塁打や一番丸本君の三遊間タイムリー打などで3点を失った成章だった。この回だけ小川投手の投球が少し甘くなり、平安打線の打球もいいところへ飛んだ。その流れからしたら、もしかしたらワンサイドになってしまうかもしれないという懸念もあったが、3回から小川君が再び持ち直した。宮下中堅手の背走して捕球した好プレーもあって、ムードは盛り上がった。

 6回成章はその宮下君が中前打してチーム初安打を放つと、バント悪送球などでチャンスを広げ、1死二三塁から三番中尾君が投手返しの好打で、二者を迎え入れて1点差とした。菜の花をイメージしたという黄色の応援団の陣取る満員に膨れ上がった三塁側アルプススタンドも沸き返っていた。さらに、鈴木君も深い遊ゴロで内野安打かと思われたが、ここは河野君の好守備で刺した。小川君も快音を残したものの、中直となった。一気に畳みかけたい成章だったが、あと1本が出なかった。

 それでも、8回も宮下君からの安打で食い下がり、9回も鈴木君の死球、小川君の安打などでチャンスを迎えたが、盗塁死などもあり、川口君をリリーフした松田君に抑えられた。糟谷寛文監督は、「あそこは送る場面かもしれませんけど、最後までウチの野球をやっていきたかった。21世紀枠で選ばれたことは感謝しています。満足しています」と、敗れたとはいえ大応援団を感動させたことに満足していた。夏への課題も見えたことであろうし、さわやか成章が夏の舞台で再び姿を現してくれることを期待したい。


 1回戦で東北を下した北大津が今度は優勝候補の横浜を下して、勢いを見せた。
 1点を失った北大津は、保木(ほうき)君が内野安打で出て悪送球で進塁。1死後四番石川君が左翼線二塁打で同点。さらに2死となった後橋本君がカウント0−3から一二塁間を破って逆転。さらに岡本君も出塁して2死一三塁から八番河合君が中越二塁打してこの回4点を奪う。

 さらに圧巻だったのは、6回には石川君が、土屋投手を捉えて左翼へソロ。8回には代わったすぐの田山君から龍田君が左翼へ本塁打して、2発で天下の横浜を完全に押さえ込んだ。

 北大津の思い切りのいいスイングは、カウントに関係なくいつでも発揮されていた。

 エースの河合君も、走者こそ出すものの、強打横浜に対して、あと1本の決め手を与えず、巧みに抑えた。伸び伸びとした雰囲気の北大津は、甲子園で自分たちの勢いをつけているという感じだ。

 陽気な宮崎裕也監督も、「自分でもビックリしています。ボクは何にもしていませんからね。選手たちが自分たちで話し合って攻め方を決めていったんと違いますか。応援の皆さんに後押しされて一発が出ましたね。ボクもベンチで観客の一人になっていました」と、自チームの快進撃に喜んでいた。


3月30日(日)
第80回記念選抜高校野球大会 3回戦(阪神甲子園球場)

鹿児島工 000 000 000=0
平   安 000 010 00X=1

智弁和歌山 000 000 010 01=2
宇治山田商 000 100 000 00=1 (延長11回)

 今年のセンバツはロースコアで僅差の試合が多い。とくに、大会9日目までで1−0が5試合というのも記憶にない。
 それが、打てなくて貧打線というよりは、好投手が持ち味を出してよく投げて、しかもバックがよく守るという形の1−0が目立つ。それだけ質が高い試合が多いともいえよう。

 前々日に3−3で、しかもお互い7回に2点、10回に1点を取り合って延長15回引き分けとなった。その再試合の平安と鹿児島工だったが、この日もまた息詰まるような投手戦となった。
 前の試合では鹿児島工は内村君が15回を完投したのに対し、平安は川口君から、9回に松田君が継投し、10回に再び追いつかれてから左翼手の小林君が粘りの投球をするという継投だった。

 平安はこの日もさわん川口君が先発したが、鹿児島工は10をつけた左腕石堂君が先発だ。これは、意表を突いたというよりも、内村君がひじが張ってしまって投げられない状態で、苦肉の当番ということだった。ところが、その石堂君が大きく曲がるカーブを巧みに使いながら、好投。またしても、僅差の争いとなった。

 均衡を破ったのは平安で、4回2死走者なしから、児玉君がこの日右翼に入っていた内村君の頭上を襲う三塁打を放つと、六番河野君が狙いすましたように中全へはじき返した。この1点が、試合の進行とともに重くのしかかるようになっていき、気がついたら9回。川口君も丁寧に投げて、持ち味のチェンジアップを巧みに使って鹿児島工打線をかわした。

 4月からの校名変更を控え、ラスト「HEIAN」を少しでも長く維持しようというムードも高まっている平安。原田英彦監督も、「あいさつへ行ったら、応援席からも、まだ終わらんぞ、という声が聞こえました。ボクも平安ファンでもありますが、まだ終わらんでよかったという気持ちはあります」と、誰よりも平安を愛する監督らしいコメントを残していた。川口投手に関しても、1球1球気持ちを込めて投げていたことを評価していた。


 4回に四番木田恵太君の左翼へのライナーのソロ本塁打が出て、それを豪腕のエース平生君が守りきるという形の宇治山田商。2試合連続でまたまた1−0の試合になるのかという感じもしてきた8回表、智弁和歌山は6回途中から岡田君をリリーフしていた林君がこの回先頭打者として安打。2死二塁から、三番勝谷君が中前へタイムリー打してついに同点となった。平生君も決して力んだわけではないだろうが、ファウルで粘った勝谷君の執念が上回ったということだろう。

 9回山商はパント失敗はあったが、盗塁で2死二塁で1打サヨナラ機を迎えるがここは林君が投げ勝って、今大会4試合目の延長に突入した。

 この試合の最大のハイライトとなったのは10回、宇治山田商は2死二塁で木田恵太君という一打サヨナラの絶好のチャンスを向かえ、初球をジャストミートしセンターオーバー、誰もが「サヨナラだ」と思った瞬間、田甫(たんぼ)君が背走して振り向きざまにキャッチというファインプレー。このプレーが呼び水になったのか、12回坂口君が右中間を破って二塁打すると、五番芝田君が左翼線へ快打して二塁走者を迎え入れた。
 これが結局、決勝点となった。ここまで、粘って好投していた平生君だったが、ついに力尽きたという感じだった。中居誠監督も、「延長に入ってからは智弁和歌山の菊力を感じました。最後には力負けでした」と、力負けを認めつつも、平尾君の頑張りは評価していた。



今週のエンドメッセージ
 今大会は僅差の1−0という「流れ力」が作用しているようです。リニューアルされた甲子園は