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三度のメシより
高校野球!

野球オヤジ手束 仁の
高校野球
観戦日記

2005年 静岡草薙球場に於







ほぼ週刊テヅカ
2010年7月9日(金)
第376回

 6月最終週の練習試合は、各校にとってはそれぞれ意味がある。本番前の最後の調整と確認でもあるだけに、投手起用や打線の組み方も大会を意識したものとなっていく。また、その一方で期末試験や学校行事との兼ね合いもあり、指揮官としては頭の痛いところでもある。それでも、最後の夏へ向けて、3年生にはより良い状態で大会の試合に向かわせたいというのは本音だろう。

6月26日(土)
練習試合(城東高校グラウンド)
両 国 000 000 000=0
城 東 030 000 00X=3

 下町ダービーというか、総武線の亀戸―錦糸町対決というか都立の近郊校同士の対決である。城東はこの日がたまたま学校公開日ということもあって、近隣の中学生も多く見に来ていた。ギャラリーが多いと、いやが上にも雰囲気は盛り上がってくる。二度の甲子園に出場実績もある城東が格上だろうが両国にも鈴木慶君という好投手がおり期待感も高い試合となった。
 鈴木慶君はスラリとした長身でトルネード気味に体を回転させながら、サイドから投げ込んでくる変則タイプ。ストレートも伸びがあるが、スライダーの切れがいいとそうは打たれない。内野に失策があろうが、ポーカーフェースで淡々と投げていくのも特徴といえそうだ。ただ2回、少しスライダーが甘く入ったところを六番小川君、七番岩戸君に連打され、八番小杉君の左越二塁打と一番清水君の中前適時打で3点を失った。

 この回だけ、抑えようという気持ちが力みになってしまったのかもしれない。それでも、以降は失策でピンチを招いてもその後をしっかりと押さえるなど、試合をまとめられたことは自信につながっていくのではないだろうか。
 ただ、両国としては打てなさすぎた。二塁を踏んだのも3回の1度だけでは攻めきれなかった。「もう少し食い下がれると思ったのですが、攻められませんでした。それでも、投手はある程度投げられることは確認できたと思います」と、阿部隆行監督は、失策もあったが守りの野球に関してはある程度のめどはついたようだ。あとは、ランダウンプレーなど、細かいプレーの確認だという。

 城東は大会でも1番をつけることになっている小杉君が5回を投げ、右サイドの板垣君があとの4回をしっかりと投げて抑えた。平岩了監督としては、大会を見据えて勝つパターンの継投をイメージしていたようだ。かつての、攻撃型の野球から手堅い守りの野球になった印象の強い上等だが、確実な野球は投手しているという印象だ。あとは、爆発力が欲しいところだ。


6月27日(日)
練習試合(日大三高グラウンド)
中京大中京 000 022 000=4
日 大 三 000 000 05X=5 

 朝から午前中は雨が残ってしまったこともあって、結局午後からの1試合のみということになって、変則ダブルで予定していた志学館の試合はなくなってしまった。それでも、昨夏の優勝校と今春の準優勝校という対決である。なかなか見られない質の高い対戦でもあり熱心なファンたちが悪天候にもかかわらず多く足を運んできており、気がついたらネット裏はほとんど一杯といっていいくらいに埋まっていた。最寄駅とされている京王多摩センターからも遠く、比較的足の便の悪い日大三グラウンドながら、これだけの人が集まってくるということに感心してしまったと同時に高校野球の人気の根強さに、今さらながら感心した。

 練習試合とはいえ、見ている側にも何となく緊張感のある試合だった。中京大中京は浅野君、日大三は山崎君とタイプは異なるが注目の両左腕投手が先発。序盤から中盤にかけてはお互いが組み立てを考えながら、丁寧に投げて、打撃戦の予想に反して0を重ねていく展開となった。

 均衡を破ったのは中京大中京で5回、一番の小木曽君が左前打で出るとバントで二進。三番森本君の一打はグーンと伸びて中堅手の頭上を破る三塁打となり先制。さらに、磯村君の犠飛で2点目。6回にも、四球バントなどで2死二塁としてから九番岩月君の三塁線二塁打と小木曽君の中前適時打で2点。このリードをそのまま中京大中京が守りきるかに思われた。


 ところが、さすがに日大三だ。「このまま終わってしまってはいけないだろう」と、小倉全由監督が気持ちを引き締めた8回、四球の走者を置いて二番高山君が左翼へ2ランを放つと、続く吉澤君も目の覚めるような本塁打で続いてたちまち1点差。そのまま続投した浅野君に対して、さらに横尾君が安打で続き六番荻原君が左中間へ逆転の2ランを放った。1イニング3発で4点をひっくり返すのだから、やはり日大三の爆発力はすさまじかった。日大三は7回からは右の吉永君が切れ味のいい投球を見せていた。


 公式戦ならば、2本目を浴びた時点かもう少し前からで浅野君から森本君への交代ということは十分に考えられたのだろうが大藤敏行監督は、「リードしていたので最後の1イニングだけ森本でいこうということは考えていました」ということだが、森本君もやや背中に違和感があったということもありこの遠征ではそれほど長いイニングは投げさせないという方針だったようだ。

 ところで、この10日ほど前に衝撃的に報じられた大藤監督の今季限りでの勇退というニュースだが、「元々、大学の方でという話は以前から来ていたのですが、去年、やっと全国優勝したところですし、自分が声をかけて入ってきた(今の)1年生たちを送り出してからというつもりだったんですけど、正直、私にとっても突然のことでした」と、大藤監督自身にとってもいささか寝耳に水の人事だったようだ。


 結局、夏以降は高橋源一郎コーチが後任となるものの、大藤監督は総監督的に2年間、高校の方に残る可能性が強そうだ。それにしても、全国制覇の翌年に本人からの希望でない形での退任というのは、あまり前例がないので我々にとっても驚きと衝撃だった。


今週のエンドメッセージ
 今年は例年よりも1週間早く東西東京大会が3日の合同開会式でスタートしました。4日に何試合かを実施した後、約1週間空いて9日から本格的スタートということになります。また、福島、埼玉なども9日から始まり、その週末からはいよいよ全国各地で本格的に大会に入っていきます。
 この時期、いつも青春プレイバックを実感する季節でもありますが、グラウンドでもスタンドでもはじける高校生の若さがまぶしく感じられます。この子たちが、既に自分の娘よりもはるかに年下になってしまっていると思うと、自分の加齢に少し哀しい気持ちにもなる季節でもあります。

2010年6月30日(水)
第375回

 サッカーのワールドカップが、4年に一度の世界的なスポーツイベントならば、高校野球は毎年訪れる日本の国民的スポーツイベントの一つといってもいい。その夏がまたやってくる。
 その前に梅雨があり、ジトッとした気持ちになるのだが、その間を如何に過ごしていくのかということもチームとしてはモチベーションの維持とともに大事なことであろう。多くの場合、練習試合の組まれている週末の天候はことのほか影響が大きいともいえる。


6月20日(日)
練習試合(市立川越高校グラウンド)
市立川越 121 330 1=11
浜   名 202 000 0=4 (7回コールド打ち切り)

浜   名 000 001 0=1
芝工大高 130 202 X=8 (7回コールド打ち切り)

芝工大高 120 000 000=3
市立川越 222 001 33X=13

 前日は雨が残ったが、市立川越は何とか太田市商(群馬)と試合を行えたという。その試合で2本の本塁打を放っていた清水君が、この日も3本の本塁打を放ち、2日間で5本という大当たりぶりだ。しかも、三番に入っている清水君は昨秋の新チームの段階ではベンチ入りメンバーにも入っていなかったというのだから、ひと冬越えて著しく伸びた選手といっていいだろう。

 この日の清水君は、芝工大高戦で初回に左の木下君から2ラン、さらに3回は先頭打者で登場し、二番手久留君から特大本塁打。真ん中やや高めのストレートで振り終わった時は体勢が崩れているかのように見えたのだが、110m以上後方にあるというネットを直撃した。そこに当てたのは川越商時代の仁村薫(早稲田大→読売→中日)以来ではないかという大きな当たりだった。ここまででも驚いたのに、7回に迎えた4打席目、これも先頭打者だったが今度はカーブを巧みに捉えて左中間へ運んでいった。ストレートにもカーブにも対応できるところも示した。

 清水君は1試合目の浜名戦でも先制の切っ掛けとなる左前打と三塁打を放つなど、3打数2安打2四球。アウトとなった遊撃ライナーもいい当たりだった。唯一引っかけたのが、芝工大高戦の4回、1死一二塁で迎えた3打席目だったが、「本塁打狙っていいぞ」という新井清司監督の指示に却って力んでしまったのか、5〜4〜3の併殺になってしまった。清水君の成長については、「秋頃から勉強するようになったんだけれど、その頃からでしょう。ボールの見送り方がよくなった。これで打線に厚みが出来たのは大きい」と、指揮官も攻撃には自信が持てそうだ。


 チームとしては、元々力のある四番彌田君が浜名戦で初回に先制二塁打しているが、4回もタイムリー打で好機にしっかりと返していた。さらに、丹羽君、江澤君と続く打線は力がある。

2試合で25安打24得点と打線好調ぶりを示した市立川越。もっとも、新井監督としてはいくら打っても、投手に不安があるというが、この日はエース格として期待している左腕大岩根君が粗削りながら力のある浜名打線に対して失策や暴投絡みで4点を失いはしたものの、丁寧に投げていた。芝工を後半抑えた上倉君も使える目途が出来たといえそうだ。

 2試合ともコールドで敗れた浜名は、期待している投手が一人投げられなかったということもあって市立川越には1年生の中山遼君が先発したが、強力打線には持ちこたえきれなかった。打線も精彩を欠く形で、イメージしていた浜名の強打は見られなかった。そ「入りがよくないと、そのままチームとしての勢いがなくなってしゅんとしてしまうことが多いんですよ。あと3週間ありますから、何とか作り直していかないといけないと思っています」と、池村弘樹監督はこの負けを糧として強い意識を作り上げていかなくてはと引き締めていた。そんな中で、一番の森島君はしっかり球についていっていた。芝工大高戦でも代打で出てきてしっかりと安打していた。

 安定した3人の投手がおり、今年は守りのチームとして期待されている芝工大高。中央大に進んだ山崎雄飛も今年はドラフト候補となっている。八木久則監督としても、この投手陣が強打の市立川越をどこまで抑えられるのかという期待と試しもあって予定通り、左腕木下君、久留君、後藤君とつないでいったのだがいずれも清水君に本塁打されるなどして粉砕された。

 芝工としては浜名に対して本来は外野手だが地肩も強くセンスのいい竹之内君が好投していい形の勝ち方が出来て、指揮官としてはいい感じのはずだった。
 ところが、「予想以上に、あまりにいい形で勝ててしまったことで、満足してしまっているんですからね。こっちは、市立川越さんに対して、よーし! これから行くぞという気持ちだったのに、生徒たちが『今日は、一つ勝っているからいいや』みたいな気持になっているんですから」と、八木監督は「監督の心選手知らず」とでも言いたいかのようだった。「こういうところ、いい子で育ってきている子どもが多いものですからガツガツしていないんですね」と、教員としてはやりやすいものの勝負の指揮官としては物足りないというところであろうか。


 こうした選手のモチベーションを夏までにいかに上げていくのか、これもまた高校野球指揮官の手腕とでもいえるのだろう。芝工としては一番の丸山君の積極的な打撃が光っていた。走塁も逞しいが、1年生と聞いて驚いた。

今週のエンドメッセージ
 スポーツメディアが連日大騒ぎしているサッカーワールドカップ。日本は、予選グループを勝って決勝トーナメント進出を果たしたもののパラグアイにPK負けでした。それでも、戦前の予想からしたら大健闘といっていいでしょう。
 大会前には、誹謗中傷含めて岡田武史監督批判もメディアやネットで多く見受けられましたが、例によって手のひら返しのメディア対応です。一番素晴らしいのは、周囲でどう言われようと自分の信念を貫き思いを通し続けた岡田監督の姿勢でしょう。そこに、「天の時、地の利、人の和」も加わって流れが味方したのだと思います。
 これから夏本番に向けて、高校野球もネットなどでさまざまな勝手な意見も飛び交うでしょうが、指揮官としてはブレない思い、選手と過ごしてきた時間の重さを感じている自信を持って、挑んでいただければと思っています。そして、選手たちも、十代の貴重な時間を燃焼していかれる瞬間がある幸せを甘受しながら、思いを込めてプレーしてほしいと思います。
 結果が出れば、悔いもあるでしょうが、悔いを引きずるのもまた人生だと思います。

2010年6月23日(水)
第374回

 この時期になると各地区で組み合わせも決まり出し、いよいよ大会へのムードも盛り上がっていく。チーム作りをしていく側としては、まだまだいろいろ試したいこともあるだろうし、ベンチ入りのメンバーを決めていく時期でもあり、頭を悩ます季節でもあるという。また、その一方でここからはケガに注意しながらも、意識は高めていかなくてはならない。そんな季節である。
 練習試合のテーマも、まだまだいろいろ試すという姿勢を示すところから、点の取り方を覚えていこうという姿勢に変えるところもあれば、勝ちにこだわっていくところもある。
実際、この時期の練習試合は勝ち負けという結果だけではない要素もある。


6月12日(土)
練習試合(坂戸西高校グラウンド)
坂戸西 100 001 000=2
栃木工 000 003 00×=3

栃木工 001 000 002=3
坂戸西 122 000 00×=5

 100人を超える部員のいる坂戸西では、今月の早い時期にベンチ入りの可能性のある選手をほぼ絞った形で伝えたという。残念ながらベンチ入りから漏れてしまった3年生部員たちは、試合の合間に下級生たちにノックをしたり、トレーニング指導をしたりという役割に回っているという。「伝えるのは、こっちも辛いですよ。だけど、選手たちがそれを受け入れてくれていますから…、人数が多いですからね」と、野中祐之監督は、毎年のことながらこの時期の作業の一つとしてメンバー公表は心が傷む仕事でもあるという。
 
 今年の坂戸西は、秋季春季両大会ともにベスト4に進出。関東大会進出まであと一つというところで、いずれも浦和学院に敗退した。春は延長の末に敗れた。厚い壁ではあるが、確実に差は縮まっているという実感もあるという。

 その原動力となっているのが左腕の長島君だ。制球力もあり、ほとんど自分から崩れていかない安定した投手だが、この試合では2点リードした6回に1死から珍しく四球を出すと、さらに盗塁と失策で一三塁となり、一番福田君の三遊間を破る安打で1点を返され、なおも一三塁から、栃木工がディレードダブルスチールを仕掛けるとポークとなり同点。さらに、1死二塁から牽制球で挟みそうになりながら悪送球で一気に生還を許す。逆転となった。

 足を使った奇策が当たった形になったが、栃木工の日向野久男監督は、「いい左投手を崩していく秘策の一つとして考えていることでもありました。相手の捕手が慌てて(投球に対して前に出てしまい)ポークになりましたが、冷静に判断されたら分からなかったですね」と、満足はしていなかった。

結局、長島君の失点はこの回だけだった。6回を除くと7イニングで打たれた安打は3。出した走者もことごとく牽制球で刺していただけに、6回だけが悔やまれた。

 このところ、毎年のように好投手がいる栃木工は、今年も角田君と坂倉君というバッテリーの評価が高い。先発は、制球に安定感のある若島君だったが、走者を出したところで角田君が5回途中から登板。若島君はコーナーを突いてヨコの出し入れで勝負してくる技巧派だ。これに対して、角田君は力で投げてくるが、粗さもあるものの地肩の強さが目立つ投手だ。この日も日本ハムの今成泰章スカウト、中日の正津英志スカウトらが見に来ていた。「ためが少ないので、身体が開き気味になっていますが、ボールの力はあると思います」と、正津スカウトは評価していた。
 
 結局、この試合での栃木工の失点は初回の若島君、6回の角田君といずれもワイルドピッチによるものだった。角田君は6回、無死満塁から暴投で三塁走者を返してから、3人を三振、一邪飛、三振と抑えていく当たり、粗削りな魅力を見せていた。


 走塁ミスなどで、チャンスをつぶした反省に立った坂戸西の2試合目。「任せるから自分で考えろ」と、野中監督からオーダー含めて一任されたのだが、その張本人の吉川君は自ら四番に入ってオーダーを提出した。初回には好機に三振だったが、3回には先頭打者として安打で出ると、盗塁、捕逸で三塁まで進み、暴投で本塁を陥れた。今度は、積極的な走塁を示してアピールした。7回にも、安打して四番に入った意地も示していた。「自分で四番に入って、それで何とかしようとするから面白いでしょう」と、野中監督も満足そうだった。

 投げては、下手投げの今田君が、「今日はこのまま完投させてください」と、申し出て3失点で投げ切った。フワッと浮いてくる球は効果的で、相手打線は振り回してくると術中にはまる。夏を見据えて、長島君を助ける意味でも、今田君がどれだけ投げられるのかということは坂戸西の壁の突破への必須条件でもあろう。


今週のエンドメッセージ
 大相撲の世界が揺れ動いています。相撲ファンでもあるボクとしては、非常に残念なことだと思っています。また、それ以上に、ただでさえ部員不足で悩んでいる全国の高校相撲部が、ますます選手の勧誘が難しくなっていくという側面も発生してくるでしょう。というのも、力士を目指して相撲部に入ろう、力士になろうという目標設定を導いていくことが、ますます困難になっていくのではないしょうか。
 今回名前が挙がっている琴光喜はじめ、豪栄道、普天王、雅山、清瀬海などはいずれも高校相撲時代の有望選手でした。
 もちろん、プロになることがすべてではないのですが、頂点である部分がこれだけ揺れ動いてしまうと、インターハイを控えていますが、高校相撲界も学生相撲界も将来の選手集めなどを考えると厳しい現実になると思います。逆風なのは間違いないでしょうが、何とか頑張ってほしいと思います。

2010年6月16日(水)
第373回

 季節は梅雨入りなのだが、いよいよ夏本番も近づいてきたという雰囲気になってきた。今年は、サッカー関係で少し誌面構成が異なるのだが、スポーツ紙に各地の組み合わせが掲載されてくると、やはりワクワクしてくるのだ。もしかしたら、高校野球ではこの季節が一番楽しいのかもしれない。それは、どこも甲子園の夢を持っていられるからだ。だから、この時期に各校のグラウンドへ足を運ぶのが一番楽しい。
 これは、プロ野球ファンが、「毎年2月が一番楽しい」という気持ちになるのと似ているのかもしれない。


6月6日(日)
練習試合(横浜隼人高校グラウンド)
星   城 100 112 10=6
横浜隼人 250 011 05X=14 (8回コールド打ち切り)

長 野 200 000 420=8
星 城 000 000 300=3

長   野 000 000 001=1
横浜隼人 010 015 02X=9

 また、横浜隼人が楽しいことをやってくれた。昨夏、悲願の甲子園初出場を果たした横浜隼人は3月に訪れたときは甲子園出場記念碑が建てられていた。まあ、これは甲子園出場を果たせばよくあることなのだが、それから3ヶ月後に訪れてみたら、試合の合間のグラウンド整備に時間になると、甲子園同様に『栄冠は君に輝く』のメロディーが流される。これも、水谷哲也監督のこだわりだ。「少しでも心の癒しになってくれればという思いです。今回、一つの結果を出せたことでこういったことも別の意味で評価していただけると嬉しいですね」と、ユニホームにこだわったり、グラウンド整備スタイルにこだわったりという、“横浜隼人スタイル”はまだまだ健在だ。

 前日には作新学院と試合をしてきたという星城は金曜日の夜にバスで名古屋を出発してきた。週末に夜行と一泊で2試合ずつ、という遠征を組んでいる学校は比較的多い。遠征試合を組むことで、いつもとは異なった環境での試合を経験することと、それぞれの取り組み方を学習できるという効果もある昨秋は北信越大会にも進出して、21世紀枠の候補校にも推薦された長野も、やはり前日から関東入りしており、前日は大宮西で八千代東を含めての変則ダブルをこなし、横浜入りした。はからずも、八千代東、横浜隼人と昨夏関東から初出場を果たした学校との連戦という形になった。
 
 こうした他地区からの遠征校がある練習試合は、さまざまなチームを見ることが出来て私のようなものにとっても、どういうチームがどのくらいの戦力なのだろうということが見られるし、非常に興味深い。それに、その地区の事情なども窺うことが出来れば、情報収集としても非常に大事な場面ともいえる。また、遠征してきた各校の人たちも、それぞれに何かを学んでいこうという姿勢だ。


 星城の山元浩太監督は、県内で置かれている立場も横浜隼人と非常に似ているということで、激戦神奈川からいくつもの壁を乗り越えて、いかにして横浜隼人が甲子園にたどり着いたのかということを聞きだし、中京大中京、東邦、愛工大名電といった壁を破るためのヒントとしていた。

 山元監督は、「元気のいい攻守交替や、腰の低いグラウンド整備の姿勢とみんなが声を出していくスタイル、コーチャーや控えの選手の動きなども勉強になりました」と、さっそく帰って実践してみたいことが多くあったようだ。

 試合は、先発した石田君が序盤で捕まり、横浜隼人に対しては細かい継投で抗戦したが及ばなかった。しかし、長野に対しては初回に三番羽入田君に2ランこそ浴びたものの、以降6回までしっかり投げられたのは収穫だった。杉田君は1年生で、身体も出来てこれば、もっとスピードも増すであろうし楽しみな素材である。


 横浜隼人は昨夏も甲子園で投げた今岡君が先発したが、微妙にコントロールに苦しんで6失点。味方が得点を獲ってくれたので、試合は落とさないですんだものの水谷監督は、「真面目すぎるんですかね。状況とか相手の打順とかを意識して上手に投げ分けていけばいいのに、一番から九番まで同じように投げようとするから、自分で苦しんでしまうんですよ」と、8イニングの完投で12安打を浴びて与四球5という内容には不満を示していた。

 もっとも、夏の本番へ向けて、今の時期は選手たちにも肉体的にも精神的にも負荷を与えて、疲労もピークになりつつあるというところもあるだろう。そんななかで、横浜隼人としては二番に入っていた工藤君が2回の3ランを含む4安打4打点と気を吐いた。体は細いが、バットコントロールも巧みだ。

 横浜隼人は長野戦でも、6回にやや疲れの見えた羽入田君から右線二塁打を放つなどして、一挙5点を奪い、8回には代打高橋竜君の右越二塁打などで攻撃力を示した。そして、左腕の飯田君が7イニングを結果的には被安打5の無失点。スイングの鋭い長野打線相手だけに、好投と言っていいだろう。

 長野は本来のエースともいうべき西沢君が故障で投げられず、この日、星城戦は飄々とした左腕佐々木君と川上君でつなぎ、2試合目は本来は三番遊撃手の羽入田君にもっともセンスがいいということで試合を任せた。佐々木君は考えながら丁寧に投げて、7回で3失点はまずまずと言えよう。制球がいいので、四球で崩れることはなさそうだ。倉坪知之監督は打線を含めて、今年は十分に手ごたえを感じている。それだけに、この時期に地元で開催されている春季北信越大会に出場できなかったことを悔いていたようだった。

今週のエンドメッセージ

 映画『RAILWAY』を見てきました。リストラを実行していくことで、一流会社の役員ポストが約束されていた男が、同僚の死や母親の病気などを切っ掛けに、50歳を間近に、給料も半分以下の、幼い頃の夢だった山陰のローカル電車一畑電鉄の運転手になるという話でした。
 ストーリーだけを言えば、理想主義のキレイゴトのようにも見えますが、この映画の主人公よりも少し年齢が上で他人から見たら好きなことをやっているように見られるボクとしては、妙に思いが重なる部分のある映画でもありました。ほとんどの人は、自分の思いに向かって進みたい気持ちがある一方で、毎日の生活やしがらみで、もちろん夢だけで生きていられない現実に直面します。それに、自分が一番好きなことに対して、仕事として足を踏み入れた以上、もう後戻りはきかなくなってしまうのです。
 それでも、追いかけ続けたい夢があるのかないのか、それがその人の思いだと思います。高校野球の現場にいる指導者の人たちも、そんな現実の中で、葛藤しているのだと思います。
 だけど、やはり、自分の思いに忠実に生きていくことが、「やっておけばよかった」という悔いはないだろうとは思います。ボクも今、そんな思いを抱えながら、高校野球や高校スポーツの現場に足を運んでいるのです。

2010年6月14日(月)
第372回

 切磋琢磨という言葉がある。改めて言うまでもなく、「互いに励まし合って鍛錬や修行をすること。仲間同士でお互いに励まし合ったり、競ったりして技量を高め合うこと」という意味だが、高校野球の指導者たちほどこの言葉が当てはまる関係はないのではないかと思うくらいだ。それぞれが限られた環境や条件の中で、お互いに甲子園を目指している、そんな思い張り強い関係を作っていくのだ。そんな、指導者たちのつながりを追っていのも面白い。


5月29日(土)
練習試合(宇都宮清陵高校グラウンド)
宇都宮清陵 002 010 001=4
白  河  001 020 000=3

白  河  000 320 101=7
宇都宮清陵 010 100 000=2

 栃木県と福島県隣県である。隣県だけれども、地区が異なるので、公式戦で対戦するには原則的には甲子園以外はない。それで、環境や力量が似通っているのであれば、そういう関係のチーム同士というのは、お互い最も練習試合を組みやすいともいえる。また、それぞれの活躍に刺激を与えあいやすいし、刺激を受けやすい。神奈川県と静岡県、群馬県と長野県や新潟県、岐阜県と滋賀県、福井県。香川県と岡山県や兵庫県といった関係もそうだと言えよう。

 また、ボクのように、見る側の立場としても、こうした似通ったチーム同士での他県勢の対戦というのは非常に興味深い。この、宇都宮清陵と白河は、昨年11月にも試合を組んでおり、ひと冬越えてお互いがどれだけチームとして成長してきたのか、それを確認しあうのも意味があるであろう。お互い、甲子園が見えかかってはいるがそれぞれが、あと一つの壁を越えないと甲子園には届かない、そんな思いは同じである。

 特に、白河の場合は箭内寿之監督もとにかく、聖光学院という存在を意識しており、「聖光学院に対してどう戦って勝っていくのか、それが出来れば甲子園に届く」という思いは強い。その一方で、「聖光学院が甲子園でいい戦いをしてくれることで福島県のレベルも上がっていると思います。それだけに、その壁を破らなくてはいけないのです」と、意識を高めている。


 その白河は、故障が癒えたエースで四番の佐藤克君が2カ月ぶりの登板となった。まだ、リリースがまとまりきれていないということもあって、抱きとしては五分程度だったかもしれないが、時にズバリといい球が来ていた。これから投げ込んでいって、夏本番へ向けて作り上げていけばいいのであろう。結局、5回途中で2死球を与えたところで降板し都合3点を失った。


 佐藤克君の出来よりも、箭内監督としてはちょっとした気の緩みからのミスや、好機に攻めきれなかったことを指摘していた。守りでは、送球ミスや不用意に与えた四球に暴投、捕逸など。攻めでは、初回に1死二三塁から走塁ミスで併殺を取られたりというところだった。「こんなプレーをしていたのでは聖光学院には勝てない」と、ミーティングでも常に「聖光学院」という名前を上げて、選手たちにもその意識を刷り込んでいる。
 
 試合としては、3―3で迎えた9回に2死一三塁から、宇都宮清陵は重盗を仕掛けて決勝点を奪った。白河の二番手として投げた、左腕邊見直に対して、家田君が安打して出ると二盗、内野ゴロで三塁へ進んだ後、一か八かの重盗だったが、斎藤崇監督は、「左投手に対して、試してみたいと思っていたことなんです。この時期は、こうした試しをいろいろやっていかないといけませんから」と、上手くはまった作戦に満足げだった。

宇都宮清陵としては、2年生の永藤君が7回を3失点に抑えたが、大きなタテのカーブはかなり有効だった。5回こそ、九番で途中から出場していた山田君、五番の小松君にいずれも左線に二塁打されるなどして2点を失ったものの、他はしっかりと抑えていた。

 この日は、1日中ややどんよりとした天気だったものの、降ることもなく過ごしやすい日だった。宇都宮清陵としては、2試合通じてやってみようということをいろいろトライすることが出来た。2試合目では、3人目として投げた1年生の野澤君は斎藤監督の期待も高い投手だ。まだ未完成で線も細いしモロそうな印象を与えるが、バネのよさを感じさせてくれた。死球に野選が絡んで1点を失ったものの、楽しみな投手だ。

 白河では4回に三塁手からマウンドに登った根本君が6イニング1失点と踏ん張ったが、箭内監督が、「投手として、あえて作った」という右横手投げで、まだフォームが固まりきっていないのでぎこちなく見えるところもあるものの、制球力もある。リーチの長さもあるので、球持ちもよく変則気味で打ちにくい投手となれそうだ。2年生でもあり、投手としてこれからどこまで伸びていくか注目したい。


 なお、この試合では四番右翼手として入っていた佐藤克君は、三塁打と二塁打2本と長打力のあるところを示した。また、白河としては機動力を意識した攻撃や、あえて外野を深く守らせて広さのあるあづま球場や磐城グリーンスタジアムを念頭に入れたものだった。


今週のエンドメッセージ
 6月になって、サッカーのワールドカップも始まりますが、高校野球の各地区大会の組み合わせも決まり始めます。また、恒例の高校野球関連誌も相次いで刊行されます。中旬発売の日刊スポーツ出版社の「アマチュア野球」では今回の特集は「壁を破る」がテーマとなっており、宇都宮清陵の斎藤崇監督と白河の箭内寿之監督の対談もあります。また、同企画で豊田西・平林宏監督と彦根東・今井義尚監督との対談も組まれています。いずれも、壁にハネ返されながらも挑み続けている人たちの熱い思いが語られています。
 また、去る4日に拙著『流れの正体〜もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社・刊/1500円)が刊行されました。ここでは、昨夏、壁を破った横浜隼人の話や、全国制覇という壁を43年ぶりに打ち破った中京大中京の話をメインとして展開しています。
 是非、御一読いただければと思っています。

2010年6月3日(木)
第371回

 練習試合をどこと、どのように組むのかというのは、高校野球指導者にとっては一つの大きな仕事である。高校野球の場合、さまざまな相手と試合をすることによって、選手たちもそこから学ぶことも多い。指導者も発見することや気づくこともさまざまだ。
 自分たちよりも強い相手と組むことで刺激を受けることもまた大事だ。指導者たちがそんなさまざまな思いで組んでいる練習試合を追いか書けるのもまた、楽しいものである。

5月9日(日)
練習試合(横浜高校長浜グラウンド)
横 浜 000 100 100=2
城 東 000 000 003X=3

城 東 000 000 100=1
横 浜 101 100 00X=3

 以前から、何とか横浜高校に練習試合をお願いしたいという気持ちの強かった城東・平岩了監督。それが、ついに実現したという感じなのだが、かつて東京学館浦安のコーチをしていたという知人を介して、横浜の小倉清一郎部長につないでもらい、そこで実現した。
 
 城東といえば、1999年と2001年に甲子園にも出場している、東京都の歴史を大きく変えたともいわれる都立の強豪だ。ついこの間の出来事だと思っていた最初の甲子園出場から10年以上の歳月が流れ、監督も有馬信夫(現総合工科監督)→梨本浩司(現広尾監督)と、東京都の教員人事の中で代わってきたが、いずれも日体大出身のほぼ同世代の指導者の間で引き継がれ続けているのは、やはり城東という2度も甲子園に出場している都立校を大事にしていこうという東京都の姿勢もあるとみてもいいのではないかと理解している。


 閑話休題、平岩監督の思いで実現した試合。「天下の横浜の胸を借りられるだけでも大変なこと」という意識が、選手たちにどこまであるのかどうかはわからないが、城東の選手たちはむしろ伸び伸びとした雰囲気で戦っているようにも見えた。

 そして、2点を追う9回、一番大野君が右中間三塁打。彼としても、この日2本目の長打だ。さらに岩戸君、宍倉君が四球で満塁となると、ここで牧田君がスクイズを決めて1点差。さらに、1死一二塁でさらに間宮君の二ゴロをやや軽くさばこうとした大石君が後逸、結果としては城東の逆転サヨナラとなった。練習試合とはいえ、春夏合わせて5度の全国制覇を果たしている横浜に対して劇的な勝ち方をして、応援に訪れていた父母や城東ファンの人たち大喜びだった。
 
 城東は、先発本田君、二番手が下手投げの板倉君、三番手が一塁からマウンドに向かった左の間宮君で、いずれもかわしていくタイプだが、目先を変えながらも強力な横浜打線を何とか抑えていったことは自信になったのではないだろうか。


 板倉君は、1試合目で4イニングで1失点。2試合目でも2イニングを投げて木藤君の三塁線二塁打で失った1失点のみ。四死球は合わせて5個あったものの、走者を出しながらの投球も持ち味といえば持ち味だ。間宮君も、2試合で4イニング投げて、走者を出さないで完全に抑えられたのは、自信にしていいだろう。

 平岩監督は、「たまたま逆転できましたが、本来ならば完封負けの試合ですよね。正直、まともな試合にならなかったらどうしようかという不安もあったのですけれど、内容はともかくとして崩れないでやれたことはよかったと思います」と、強豪相手に2試合とも、少ない得点を守り合い奪い合うという展開の試合で、目指す野球に近い形の試合が出来て安堵していた。

 横浜は4回井上君の左線二塁打、7回は2死一二塁から大石君の左前打で得点したものの、篠崎君を9回からリリーフした荒木君が代わり端に三塁打されてリズムに乗り切れずに逆転された。
 さすがに、連敗するわけにはいかない横浜は2試合目は序盤から小刻みに得点して、柳君から篠崎君とつなぎ、8、9回は1年生ながらもしかしたらこの夏は主戦格になるのではないかという左腕の山内君を投入。落ち着いた投球で、城東打線を抑え込んだ。

 百戦錬磨の渡辺元智監督は、「今年のチームは爆発力がありませんから、どことやってもこういう試合になるのは仕方がないでしょう。だけど、連敗するわけにはいきませんから、最後は昨日作新学院に完封していたので、今日は予定していなかったのですが、山内を行かせました。夏は、何人かは下級生が入ってくるメンバーになるかもしれませんが、そのことは上級生もわかっていると思います」と、1年生の台頭をほのめかしていた。

 また、城東に関しては、「それぞれ持ち味の違う投手がいて、力まないで役割分担していけば面白いと思います。しっかりしたチームだと思いますよ」と評価していた。
 城東としては、夏へ向けて横浜を「仮想帝京」と捉えて、何はともあれ一つ試合を獲れたことは大きな自信といってもいいだろう。

今週のエンドメッセージ

 早くも6月です。今月は、サッカーのワールドカップがあるということで、メディアもサッカー寄りになっていますが、プロ野球は交流戦真っ只中。来週からは全日本大学野球選手権もあります。そして、2週目あたりからは、夏を目指す全国高校野球の各地区大会組み合わせが決まっていきます。こうなると、いよいよまたなっモードになっていきます。
 大学野球も楽しみですが、高校野球の組み合わせも楽しみです。 

2010年5月13日(木)
第370回

 今年のゴールデンウイークは珍しいくらいに好天が続いた。毎年、必ずどこかで一度くらいは崩れるのだが、今年はそれがなかった。連休中も連日のように試合が組まれている野球部では、雨があればあったでいい休養ということにもなるのだろうが、こうも好天が続くと、さすがに選手たちもやや疲労気味になってくるというのも正直なところかもしれない。
 それでも、各校とも、ここは多少疲労がたまっても、夏へ向けてこれからはさらに絞り込んでいく時期でもある。怪我に注意しながらも、これから6月半ば頃まではある程度は負荷をかけていきながら、チームの底力を作り上げていく時期でもある。また、その中から、技術的にも精神的にも一回りも二回りも成長できる時期だともいわれている。

5月5日(祝)
練習試合(南稜高校グラウンド)
南   稜 000 020 000=2
東亜学園 000 120 04X=5

東亜学園 210 032 120=11
南   稜 022 000 002=6

 安定したフォームから力のある投球が出来る東亜学園の鈴木直君は、1日おきに完投というペースで投げているという。この日も、上田滋監督は先発した以上は完投という考え方で送り出していた。これは、夏を意識した場合に、勝ち上がっていけば、当然それくらいのサイクルで投げていくことになるであろうということを想定してのものでもある。

 鈴木直君は球種としてはストレートとカーブ、スライダーというものでそれほど多いというものではない。球速の数字的だけだと先発して3回まで投げた南稜の齋藤純平君の方があったくらいだった。ただ、ストレートは伸びている感じがするし、スライダーもキレ味がよく鋭い。スピードそのものは、132km/hが最速で、見た目ほど数字は出ていないので、「あれっ?」という感じなのだが、それだけ投げ方がよく初速と終速に差がないということであろう。捕手のミットに収まる音もいいのは、球の回転がいい証拠だろう。


 この鈴木直君を見て、「このくらいのレベルの投手を打てないと、埼玉県で勝ち上がっていくことはできない。こういう投手を打てるようなチームにしていきたい」という意識の南稜遠山巧監督だったが、5回には四番菅原君が好機に2点打を放って逆転した。ここまでの戦い方としては、南稜としても非常にいい形だった。


 しかし、得点した直後の回に、南稜は二人目として投げた清水君がこらえきれなかった。東亜学園は九番佐藤亮君が中前打すると、バント後渡辺優君が右中間三塁打してたちまち同点。さらに、飛球失策があり、その後に左中間二塁打が出て再び逆転。8回にも南稜は失策からほころびて、最後は三番布施君に右越三塁打なども出て4点が入った。


 一旦逆転されても、僅差でついていって終盤で何とかしたいという展開を描いていた遠山監督としては、失策から崩れて持ちこたえられないことに対して厳しかった。また、打線もその後、鈴木君に対して攻略の糸口が見いだせないまま、10三振を喫した。
東亜学園としては、鈴木君が安定しているので、ある程度は試合が作れるという意識があるのだが、四番北沢君、五番三堀君と中軸がそれぞれ2本の二塁打を放つなど、打つべき選手が打つべきところで打っていた。

3年生が10人しかおらず、チーム構成上も2年生が何人か中核に入っている南稜だが、意識を作るという意味も含めて、二つ目の試合では遠山監督は3年生に、「自分たちだけで戦ってみろ」という指示を与えた。3年生では投手は右横手の技巧派でやや変則の木島君しかいないので、「ある程度打たれるのは仕方がない」というつもりで、その中でどう工夫していくのかということをテーマとして与えていた。
 
 そうした中で、力のある東亜学園に対して、前半は食い下がった。後半になって力の差を示すような形で東亜学園が得点していくのだが、それでも9回には一番徳重君が安打で出ると、2死後土屋君が左越二塁打して返し、さらに成田君、車谷君といずれもファーストストライクを叩いていくという積極的な気持ちで奪った2点だった。また、ワイルドピッチした後のフォローが早く、結果として本塁を狙った走者をさせたというプレーなど、随所に気持ちが入ったプレーが見られた。


 東亜学園は、下平君が6回を投げ、平井君が残り3回を投げた。上田監督としては、鈴木君に続く投手を何とか夏までに作り上げたいという気持ちである。東亜学園は、学校とグラウンドが離れておりどうしても練習時間が限られているというハンデがある。しかも、グラウンドは中堅がほとんど取れないという変形なので、試合はすべて遠征となる。そういう中で、昨夏もベスト8、今春もシード権を獲得した。ただ、甲子園出場は1989(平成元)年が最後となっている。

 東亜学園といえば、男子バレーボール部が全国的強豪として知られているが、野球部も頑張っているのだというところをアピールしたいところであろう。

今週のエンドメッセージ
 
連休が明けて、連戦疲れの選手たちは一休みというところかもしれませんが、15日からは関東地区大会が水戸市とひたちなか市で開催されます。その翌週には、東海地区大会が開催されますが、1回戦で東邦と大垣日大が対戦することになりました。阪口慶三監督が、初めて「TOHO」を相手として戦うことになります。東邦の森田泰弘監督との師弟対決など、見どころは多そうです。どちらも負けられない意地があると思います。

2010年5月7日(金)
第369回

 ゴールデンウイークを中心としたその前後は、関東、東海、近畿、中国など本州各地では春季大会の佳境を迎える。もっとも、早い地区ではすでに大会が終了しているところもある。また、この休みを利用して県外へ遠征して、新たな刺激を受け、宿泊など様々な体験をしながらチーム強化をしているところも多くある。
愛知県三河地区の公立の強豪成章も、昨年からこの時期に関東遠征を組むようになった。

5月4日(休)
練習試合(慶應義塾日吉台グラウンド)
慶應義塾 003 021 401=11
成  章 000 040 021=7

伊豆中央 000 000 200=2
成  章 302 401 00X=10

慶應義塾 200 010 003=6
伊豆中央 000 000 000=0
 
 一昨年のセンバツに21世紀枠で選ばれ、甲子園でも開幕戦を制して学校としても歴史的な甲子園初勝利を挙げた成章。100年以上の歴史を持つ学校でもあり、甲子園には多くの卒業生が詰め掛けた。その折に、関東地区在住の成章OBたちで結成されている関東成章会の人たちから、是非関東でも成章の試合が見たいということで、さまざまな尽力があり、昨年からこの時期に関東遠征が組まれるようになった。

 かつて、成章は東大和と交流がありその時の東大和の人たちも協力したり、応援に駆け付けた。宿泊先の多摩京王プラザホテルも、成章の卒業生が支配人となっているという縁で格安で協力してもらっているという。こうした縁があるのも、高校野球の素晴らしいところだといえるだろう。

 成章は3日から早稲田実、府中工などと連戦を重ねて、3日目のこの日は慶應に訪れた。ネット裏には関東成章会の人たちも多く集まっていた。成章野球部が遠征してきているということを連絡し合い、激励にやってきたのだ。糟谷寛文監督よりも古いOBの姿も多かったが、「ありがたいことです。生徒たちは自分たちの学校の歴史を改めて知ることができるし、自分たちだけでやっているのではないということも意識できるんです。それに、こうやって多くの人に見られることで、間違いなく励みになると思います」と、遠征の価値と狙いを語っていた。

 
 また、チームとしても関東の強豪校と戦うことで、自分たちの力を試すことが出来るという面も、もちろん大きな要素だ。

 糟谷監督としては、「今年は、打線は甲子園へ行った時のチームよりも打てると思いますから、あとは投手を含めた守りです」というが、期待の左腕西崎光君が爆発力のある慶應打線相手にどれだけ通用するのか、また、打たれたとしてもどうして打たれたのかということをテーマとして、何点取られても完投ということで、西崎君は投げ切った。

 結果的には、慶應の中軸三番橘君に2ランと3ラン、谷田君に3ランとソロをそれぞれ2本ずつ打たれ、谷田君には9回にもタイムリーを打たれこの二人だけで10打点を奪われることになったが、少し甘いと力のある打者には持っていかれると、打たれたことで学んだこともあったようだ。

 それでも、打線は5回九番の鈴木健君が二塁打で出ると、三番福澤君も二塁打し、さらに四番豊田君もタイムリー打を放つなど4点を返した。8回にも佐飛君の2ラン、9回は広角に打てる一番手嶋君の中越三塁打などで1点を返し、慶應の誇る投手陣の左腕三宮君から4点、スピードのある明君から3点を奪ったのは力のある証明といっていいだろう。

 慶應はこの春は、2回戦で横浜を延長の末に下したものの、3回戦では優勝した桐光学園に敗れた。「春はとんでもないクジだったですからね、まあそれでもシードは取れましたが…」と上田誠監督は苦笑していたが、週末には宮崎での招待試合も控えており、慶應としてはそれらの試合をこなしながら夏へ向けての調整をしていくという方向性のようだ。

 また、この日は変則ダブルとなっており、伊豆中央も慶應グラウンドに訪れていた。一関係としては、ちょうど成章と慶応の間に位置することになるということもあって、上田監督が、「今後の交流を持つとしても、お互い距離的にも近いし行き来できるのではないでしょうか」ということで引き合わせたという縁でもある。

 伊豆中央は、昨秋は東部地区予選を勝ち上がって県大会に進出したが、浜松商に敗退。この春は東部地区予選で沼津市立に敗退して県大会進出はならなかったが、気持ちのないプレーをすると即交代など、中嶋清之監督の徹底した指導が行き届いているという印象だった。攻守交代などの動きもきびきびしており、いい雰囲気のあるチームとなっている。


 慶應打線を6回まで失策絡みと暴投などで3失点しながらもしのいだ左腕清水君は、走者を出しながらも粘りの投球だった。気持ちも前向きで、気合が入っていた。また、リリーフした芹澤君は9回に捕まったものの、7、8回は小気味よく自分のリズムで投げていた。

 慶應は、分厚い投手陣に食い込みたい佐伯瞭君、変則の今西君、左腕の小気味いい松本君が投げた。9回、何とか1点返したいと食い下がる伊豆中央に最後松本君は粘り勝った。

今週のエンドメッセージ

 好天続きのゴールデンウイークでした。いつも、必ずどこかで天気が崩れるので、非常に珍しいことです。ほとんどの高校野球部は、世間が連休で浮かれている間にも、試合が組まれていて、自分たちの思いに向かって頑張る毎日だったのではないでしょうか。そして、その父母たちも熱心な人たちは、みんな朝早くからグラウンド通いです。それはそれで大変なのですが、そのことで青春を再び取り戻している人たちもいるようです。
 高校野球は、青春プレーバックの場でもあるのです。

2010年4月23日(金)
第368回

 関東各地の各都県では、週末を中心として春季大会が開催されている。直接甲子園出場がかかった大会ではないのだが、夏の本番へ向けての前哨戦という意味合いも強い。ほとんどの都府県で、この大会の実績で夏の大会の組み合わせのシード校を決めるので、そういう意味では、少なくとも8強、もしくはシード権の獲れる位置をキープというのが最初の目標となっている。
 そんな、春季大会の情報は、「高校野球情報.com」 http://www.hb-nippon.com/で提供しているので、今回はその間隙を縫って訪れた練習試合のレポートである。


4月4日(日)
練習試合(坂戸西グラウンド)
坂 戸 西 200 020 010=5
上山明新館 103 000 000=4

木 更 津 205 120 200=12
上山明新館 000 000 002=2

木更津 000 000 210=3
坂戸西 100 300 13X=8
 
 春休みには、とくに春季大会がまだ始まっていない北海道、東北や北信越地区の学校が、関東や東海、近畿地区に遠征して対外試合を組むというケースも多い。近畿地区には甲子園見学を兼ねて遠征するということも多い。実際、甲子園では各地の野球部員たちが多く見学に訪れている様子をよく見る。
 遠征では、交流のある学校の合宿所や公共の宿泊施設などを安価で利用させてもらうなど、それぞれが工夫しながら実施している。また、こうした遠征などの場合、指導者の人脈かあるかないかも大きく影響する。そう言う意味では、指導者間のネットワークも大事な要素といってもいい。

 山形県の上山明新館は、坂戸西の合宿所に宿泊させて貰っているという。県内の公立校の中でもスポーツの盛んな坂戸西は、野球部だけではなく、多くの部が各校入り乱れて宿泊しているという。全国レベルの男子バレーボール部などは、毎年この時期に何校かが集まって合同練習を組んでいるくらいだ。そういう他部の活動もまた、選手たちの刺激になるようだ。

 坂戸西の野中祐之監督と上山明新館の菅谷明宏監督は日体大出の1年違いで菅谷監督が先輩となる。また、この日変則ダブルに参加した木更津の金子幸雄監督は野中監督と同級生ということで、改めて日体大ネットワークの絆の強さを感じた。
 
 春季県大会予選を目前に控えた埼玉県と千葉県の各校は、春休み段階である程度チームを完成させておく必要がある。それに対して、東北各校は約1カ月遅いという日程になっているので、未完成部分が多いのは仕方がない。そんなこともあって、試合は遠来の上山明新館は二つ試合とも落とした。

 練習試合とはいえ、緊張感が漂った。というのは、木更津の近藤君が上山明新館相手に9回2死まで完全試合をやっていたからだ。あわや完全試合という展開になると、練習試合でもさすがに緊張感が出てくる。上山明新館はもちろんそれを意識して、9回は代打攻勢。松田君はボテボテの二塁ゴロで内野安打になってしまうのかという当たりだったが、梶山君が好捕してアウト。
 続く伊藤君は空振り三振したものの振り逃げかというところだったが、これも川崎裕捕手が冷静に処理して、いよいよあと一人。代打高橋君はフルカウントからの6球目は明らかに高く外れてボール。四球となって完全試合がなくなったと思ったら、一番中村君が左翼へ2ランを放った。近藤君としては初安打を浴びたものが何と2ランとなって、完封も逃してしまったのだが、それでも好投だった。


 結局、近藤君は打者30人に対して被安打1、与四球2、三振は6個のみで内野ゴロ13、飛球は8という内容は低めに球を集めてしっかり打たせていということである。ストレートの伸びもさることながら、スライダーと鋭く曲がるカーブがよくコントロールされていた。

あわやの記録を逃れた菅谷監督は、「相手の投手のリズムがよすぎて、完全に押さえられているのに何だかこっちも気持ちいいくらいに完璧でしたね」。
 また、金子監督は、「こんなところで変に完全試合なんかやってくれなくてよかったですよ。最後に打たれて何か課題を残してくれた方がいいんですよ。図に乗っちゃうからね」と、却って打たれた9回に安堵していた。とはいえ、投手のリズムがいいと守りもいいという試合の流れを証明したような木更津の守りでもあった。


 昨秋県大会ベスト4の坂戸西は、この日はその柱となった左腕長島君が最初の試合は関東ということは決めていたようだ。それが、立ち上がりは三振を取りに行こうという意識が強くすぎたのか、力が入ってしまい球も中に集まり過ぎた。そこを上山明新館打線につかまって3回までに4点を失ってしまった。それが、4回から甦った。「4回からは三振禁止にしたんですよ。三振を取りに行こうとするから捕手のサインに首振って力で行こうとして、それで苦しくなっていたんです」という野中監督の指示だった。以降の6イニングでは結果的には4奪三振で被安打は2本。左腕独特のクロスに入ってくるカーブもよく決まるようになった。

 試合そのものとしては8回、坂戸西は五番阿野君が三遊間を破って出ると、二盗、三盗して勝負どころで起用された代打保岡君が中前へはじき返して、これが決勝点となった。

 上山明新館は、変則気味の二人の投手の継投だった。先発棚村君はトップの位置が田まで隠れるようなテークバックから投げてくる。5回途中からリリーフした藤澤君は自分で工夫して見出したという左サイド。球は速くはないがスーッとかわしていくし、ぎこちなく見えたものの牽制も上手かった。

2010年4月7日(水)
第367回
 今年は、どうしたのだろうというくらいに寒いセンバツだった。陽のあたる場所にいても、日焼けだけはするものの吹く風も冷たくかった。空気そのものが冷たい、そんな甲子園だった。
それでも、ベスト8が決まる2回戦を中心に1回戦の後半から5日間、甲子園に滞在していた。今回は、そんな中からボク自身のセンバツ雑感である。


3月28〜30日
第82回センバツ高校野球大会 2回戦(阪神甲子園球場)

向 陽 000 100 000=1
日大三 020 010 00X=3

宮崎工 000 000 000=0
広  陵 000 000 001X=1

中京大中京 001 000 100=2
神港学園 001 000 000=1

大阪桐蔭 000 000 011=2
大垣日大 020 201 01X=6

 ベスト8が決まった段階で、近畿勢と四国勢が1校もいないというのは大会史上初だという。そういう現象を見ても、改めて全国各地の勢力バランスが整ってきたのだなということを実感する。
今年のベスト8は敦賀気比、日大三、広陵、中京大中京、興南、帝京、大垣日大、北照で東京と東海地区が2校、あとは中国、北信越、九州、北海道とバランスよく散ったという印象だが、野球どころといわれている近畿と四国、それに神奈川・千葉・埼玉の関東が一つもないというあたりに、春のセンバツの戦い方の難しさを感じる。
 
大阪桐蔭と大垣日大


 初戦で、優勝候補の一角といわれていた東海大相模があっさりと敗退したのも驚いた。初回にあまりにイージーに1点が入ったことで油断したとは思わないが、そこから自由ヶ丘の左腕小野君が粘りの投球を見せた。そして、同点で迎えた8回満塁の好機に、外野君が右中間を破る三塁打を放ってこれが決勝点となるのだが、注目の好投手一二三君に対して、数少ないチャンスを確実にものにしたといっていいだろう。
しかし、その自由ヶ丘も2回戦では北照がエース又野君が負傷で万全ではないながらも、左腕の千葉君が好投し、意表を突くバント攻撃などで攻略した。

 21世紀枠代表で初戦突破した向陽は藤田君の投球が光った。2回に日大三に2点を先取されるものの、4回に三番山本君がタイムリー打して追い上げる。さらに続いた好機でスクイズ失敗があり、結局、及ばなかったもののその戦いぶりは爽やかだった。胸文字の「koyo」もどことなくクラッシック感があって、歴史を感じさせてくれた。夏に甲子園に姿を現わすには、智弁和歌山という大きな壁を破らなくてはならないが、その可能性も感じさせてくれる戦いぶりだった。

 夏春連覇を目指す中京大中京は、秋季大会の段階から大藤敏行監督は、「前のチームに比べて今度は打てないということはわかっていましたから、ロースコアの試合には慣れてきました」と言っていたが、2回戦も7安打で2点。しかも、打ったのは一番小木曽君と四番磯村君、七番川本君の3人だけというもの。それでも、3回に相手失策に乗じて先制した。6回に無死二三塁のピンチを切り抜けた後の7回には1死から川本君が安打して二盗。四球などで一番小木曽君が左中間へ運んでこれが決勝打となった。


 その中京大中京を準々決勝で下すのが広陵だが、2回戦は大苦戦だった。宮崎工のやや変則気味の左腕浜田君を打てずそのまま0行進。しかし、有原君もしっかりと投げて、宮崎工も走者を返すことができず、そのまま延長に突入するのではないかという展開だった。ところが、9回、初球から積極的に打つようになって、蔵桝君が中前打、四番丸子君も左中間を破る二塁打で、わずか2球で二三塁とした。宮崎工は満塁策を講じたが、三田(さんだ)君も初球を叩いてサヨナラ打。「最後にこうやって打てるのならば、なぜもっと早くとも思いますが…」と中井哲之監督も苦笑していたが、そこまで粘って相手に点を与えなかった有原君の好投があってこそのものともいえよう。


 優勝候補筆頭に押す人も多かった大阪桐蔭だったが、昨秋の明治神宮大会を制した大垣日大が葛西君の好投に屈した。1回戦で21世紀枠代表の川島に大苦戦し延長10回の末にサヨナラ勝ちした大垣日大は、その試合後阪口慶三監督が、「こういう試合をものにするチームは必ず強くなる」と自信を持っていたが、この試合ではその阪口マジックに乗っかったかのように選手たちは伸び伸びとプレーした。

 2回に小尾君の二塁打を足場に先制すると、4回には八番時本君が2ランを放って突き放す。さらには、6回にも6番安藤君が左翼ポールぎりぎりに放り込むソロ本塁打。大垣日大は、ほぼ完璧といってもいいくらいの内容で快勝した。阪口監督も、「今日は満点の試合だった。先取点が試合を左右すると思っていたので2回の2点は思ったとおりでした。ベンチでは、お前たちは先生が思っとる以上に強くなっとる。立派、立派と褒めていました」と、阪口監督の乗せ力が見事に効果を果たしていたようだ。

 
結局、日大三と興南が決勝を争い、延長の末興南が初優勝を飾ったが、島袋君の評判通りの投球が栄冠を導いたということだろう。それにしても、あれだけ体を回転させて投げていながら、スタミナが落ちないのには恐れ入る。

今週のエンドメッセージ
 センバツが行われている期間、四国や九州では、すでに春季県大会が始まっています。また、東京都や神奈川県、愛知県、岐阜県などでも県大会の地区ブロック予選が始まっています。まだ、公式戦の始まっていない県の選手たちは、関西遠征を兼ねて、甲子園見学にも多くの学校が訪れていました。現物の甲子園を見ることによって、「自分たちはここを目指しているのだ」という意識が改めて持てるようになるのでしょう。また、野球を通じて、宿舎や公的な場での過ごし方も学べているのではないでしょうか。
2010年3月23日(火)
第366回

 先日、春の高校バレーの会場に足を運んだのだが、そこでつい数年前には連続優勝を果たした深谷を見たのだが、何とわずか7人の部員で戦っていた。小林旭監督は嘆いていた。「今、男子バレーは全国的に危機状態です。素質のいい子や体の大きい子がバレーボールをやろうと思ってくれないんですよ」。それでも、初戦突破したのは見事だった。
 はからずも、習志野の応援席からブラスバンドの「ミュンヘンへの道」が奏でられていた。30年以上前、男子バレーが輝いていた時代のアニメのテーマソングである。改めて、スポーツの現場で、若い世代を育て育成していくことの難しさと、日本における社会的な構造の難しさを痛感した。


3月13日(土)
練習試合(横浜隼人グラウンド)
国 士 舘 011 010 000=3
横浜隼人 000 001 30X=4

横浜隼人 022 020 000=6
国 士 館 000 013 50X=9

 この、土曜、日曜あたりから各校で本格的に練習試合が行われている。
 昨夏、悲願の甲子園初出場を果たした横浜隼人も、翌週からは学校の休みを利用して沖縄遠征を控えているが、この日は今季初試合となった。投手陣は、3イニングずつ投げていく調整となった。甲子園でも投げた飯田君と今岡君も登板した。1試合目の4回から投げた飯田君は左腕のスライダーが持ち味。左の多い国士舘打線にはかなり有効のようだが、八番の川嶋君には2本長打され、5回は三番岡君に中前タイムリー打された。

 7回からは昨夏のヒーローにもなった今岡君が投げるとリズムが横浜隼人はよくなった。その裏、下位からチャンスを作り、押し出しで1点差。さらに二番鈴木航君が一塁手横を破る二塁打で逆転した。ここまで、国士館のエース津田君を打ちあぐねていただけに、「今岡が投げると、なぜか守りでも好プレーが出たり、タイムリーが出たりするんです。不思議ですけれど、そういう何かをもっているんでしょうか」と、水谷哲也監督も今岡君の不思議な運を評価する。鈴木航君は前の打席でも右越に本塁打しており、この日はパットが振れていたようだ。


国士舘・津田君

 横浜隼人では2試合目に四番に入った中村君も中越2ランを放った。自分のツボにこればさく越えの力を持っている選手だ。

 相変わらず、機動力野球健在の国士舘は序盤、いかにも国士舘らしい形で得点した。一番から三番、さらに五、六番にも左打者がおりしぶとく粘り、コツンと転がして野手の間を抜いていく。塁に出れば、大きなリードでバッテリーを牽制し、捕逸や暴投を誘う。改めて足が速いのは大きな武器になると認識させるものである。
 2試合目は7回に飯沼君、山口君と下位の長打で逆転。投手内野安打で出た宮崎君が捕逸、暴投で三塁へ進んだのも効いた。箕野豪監督は、今の国士館野球を定着させた永田昌弘現国士館大監督の申し子でもあるが、指揮官となっても見事にその野球を継承している。


3月14日(日)
練習試合(大宮西グラウンド)
大宮西 000 000 002=2
広 尾 000 000 000=0

広 尾 112 000 830=15
大宮西 002 000 020=4

 大宮駅西口からバスで15分ほどで西高入口という停留所がある。そこから、路地を入っていくと大宮西がある。少し不思議な作りで公道を挟んで校舎と専用グラウンドがある。グラウンドはやや変形だが、それでも広さは十分に取れており首都圏の学校としては恵まれた方である。
 学校のレベル的にも、チームの雰囲気としても非常に似通った同士の対決だが、大宮西の鈴木久幹監督と広尾の梨本浩司監督は日体大の同期生でもある。ともに、公立校出身で高校野球指導者を目指して日体大へ進んだという経緯もあり、そういった面からも似通ったチームになったのだろうか。

 そんな対戦は1試合目、お互いの投手が好投して好試合となった。
 8回まで0―0で進んだ試合。どうやって1点を取るのか、また、与えないのか、そんなシミュレーションとしては格好の場となった。こういう展開となると練習試合とはいえ緊張感も伴ってくる。
 そんな9回、大宮西は先頭の三番高橋源君がよく見て四球で出塁、続く黒田君は打ち気に出ていたが勝負に出た広尾の左腕堀井君が四球を与えてしまった。関根君がきっちり送って1死二三塁。六番穂積君は三ゴロとなるが、三走高橋源君は好判断で本塁を陥れた。さらに、岡田君も二塁へ内野安打して2点目が入った。「あそこは、勝負ですから三塁手は思い切った本塁送球ですね。ただ、その前に四番に与えた四球が痛かったですよ。1点勝負の9回で、無死一二塁にしてしまってはねぇ」と梨本監督は悔やんだ。しかし、大きな割れるようなカーブの堀井君の好投は思っている以上のものだった。

 大宮西の先発西浦君は力強かった。新2年生ということだが、下半身もどっしりとしているし、ストレートも伸びている。まだまだスピードはついていきそうな逸材である。振り込みを徹底している広尾打線も打ち切れなかった。さらに、7回からリリーフした渋谷君も鈴木監督の起用に応えた。

 
 これだけいい試合をしながらも、昼休みを挟んで次の試合はどういうわけか失策、凡プレーの連鎖でお互いが悪いところを露呈し合ってしまった。前日にはメンタルトレーニング講習を受けてきたという大宮西だったが、「メンタルトレーニングの成果が何も出ていませんでしたね。恥ずかしい内容でした」と、鈴木監督は苦笑というより、呆れていた。わずかなところから崩れていくのも高校生である。いかに、平常心で普通にプレーできるのか、失策が出たときこそ、平常心であるべきなのだということを改めて思わせる試合で
もあった。

 そんな中、大宮西では2人目に投げた右サイドからスピードのある球を投げる安本君は上々の出来だった。西浦君と、タイプが異なるだけに面白い存在になりそうだ。

今週のエンドメッセージ
 いよいよセンバツも始まりました。その一方で各地では、春季大会の一次予選ともいうべき大会が始まっています。四国や九州ではすぐに県大会となるようです。
 この時期、甲子園見学を兼ねて関西遠征を組む学校も多くあります。甲子園のスタンドで、思わぬ学校の指導者とお会いすることもあります。そんなこともまた楽しみの一つです。

2010年3月16日(火)
第365回

 いよいよ球春到来。3月8日に高校野球の練習試合が解禁。ところが、この日は月曜日なので、実質のスタートはその週末の13日、14日といったところがスタートというところも多かった。それでも、センバツ出場を決めている学校や、学年末試験を終えている学校などでは、積極的に練習試合を組んでいるところもある。
 ただし、まだまだ日によって寒暖の波が激しいのに加えて、季節外れの湿った雪交じりになったり、底冷えもあって、予定されていた試合が多く流された。それでも、いくつかのグラウンドでは試合が組まれた。

3月11日(木)
練習試合(東海大相模グラウンド)

日大藤沢 101 000 000=2
東海大相模 211 000 00X=4

 この日は午後から東海大相模グラウンドで県内有力校同士の1試合。先日、大学(東海大)相手に投げたということもあって、この日は注目の東海のエース一二三君は登板することなく、門馬敬治監督としては、エースに続く投手の育成をにらんで、近藤君を起用。5回を投げて2失点。4、5回と回が進むと球が走っていくようになったのだが、立ち上がりはやや球が集まり過ぎたのか、初回に3安打を集中されて1点を失い、3回も安打の小林君を盗塁と内野安打で進め、暴投で返してしまった。いくらか力みもあったようだ。
 それでも、打線は初回、2死一三塁から五番田中俊君、六番染谷君の連打で逆転。2回には九番元木君が右越ランニング本塁打。しかし、その後は、日大藤沢の後藤君をやや打ちあぐんだ。さらに、6回から登板した二人目の吉田君には1安打でもう一つ打ち切れなかった。

 この試合では、応援団も甲子園を意識してスタンバイ。打順に合わせて、一番から九番まで、本大会モードで応援の仕上げとして合わせていた。旗手は、1回から9回まで団旗を持ち続ける練習もしていた。とくに、50人近いチアリーダーを中心とした応援団は華やかだった。
 こういう雰囲気の中で見ていると、「春が近づいてきたんだな」ということを実感させてくれる。
 東海大相模は13日の組み合わせ抽選で、大会4日目に自由ヶ丘(福岡)と対戦することが決まった。
 また、日大藤沢では五番の三戸君が3安打して気を吐いていた。

3月12日(金)
練習試合(日大二立川グラウンド)

青山学院 001 002 010=4
日 大 二 000 001 004X=5

日 大 二 211 130 000=8
青山学院 000 000 000=0

 西武新宿線玉川上水駅から徒歩15分ほどのところにある日大二グラウンドでは、前日午後に急遽1試合君だというが、この日は毎年この時期に行っているという青山学院と手合わせをした。
 春らしさは感じられるものの、吹き抜ける風はまだ冷たい。そんなコンディションだった。
 昨夏の西東京では決勝進出を果たした日大二。見た目の強さや迫力は感じられないものの、どことやっても接戦で何となく負けないチームというのが定着してきた。この日の試合でも、そんなところが出ていた。

 3点差で迎えた9回、2四球もあって満塁とすると、2本の犠飛と四番三浦君の一塁線を破る二塁打で逆転サヨナラとした。「前半全然だめだったですけれど、毎年、青学とこの時期やらせてもらっていて、ずっと負けていて、それで、よし、やるかという感じになるんですよ。今日は、四番が打っちゃっいましたね。時々、ああいう場面で打てるんですよ」と田中吉樹監督は辛勝しながらも、苦笑していた。

 この日は投手は横山君が3イニング、池田君、北村君、吉田君が各2イニングを投げた。2試合目も、赤羽(あかば)君、志礼田(しれだ)君、竹内君が投げた。横山君は低めのストレートにも伸びがあり、安定感がある。やはり計算できる投手という感じだ。また、3回で7三振の赤羽君も力強かった。下半身がどっしりとした感じだが、田中監督も驚く好投だった。
 青山学院は、「勝ちに行ったんですけれど、返ってそれを意識して9回、力んでしまいましたね」と安藤寧則監督は完投した阿部君の球界の力みを残念がった。それでも、個々のプレーはない外野ともにかなり質が高いという印象だった。河野君、倉田君の二遊間は捕ってからも速いし守備位置も思い切った形を獲り野球をよく知っている。

 打線は、この日は振ることをテーマとしていたので、0−3でも、「四球で出ようと思うなよ」と指示していた。そんな思い切りのよさは、足を使った攻撃にもつながり、連打を導いていた。六回の2死からの3連打で2点の攻撃などは鮮やかだった。

 かつては、「おぼっちゃま軍団」と揶揄されたこともあった青山学院だが、安藤監督の徹底した指導で、強豪の匂いを身につけてきた印象だ。東都の雄でもある大学(今季は2部に降格してしまったが)と同じユニホームが着られることを誇りに、さらに上への意識を持ってほしいと思う。

日大二・秋本君


今週のエンドメッセージ
 いよいよ対外試合も解禁となりました。やはり、この時期の訪れは嬉しいものです。3月は別れの季節であるとともに、新しいステップへのスタートの季節でもあります。そんな思いを感じさせてくれる春の日射しは嬉しいものです。
 そあ、今年もまた、各地のグラウンドや球場へ足を運んでいこう。そんな気持ちにもなっています。そして、そこでまた新たな出会いがあることを楽しみにしています。

2010年3月9日(火)
第364回

 先に東京都の春季大会の組み合わせが決まった。新聞発表は、日刊スポーツが本大会分のみ掲載。サンケイスポーツは一次予選となる22ブロックの組み合わせのみを紹介。毎日新聞の東京版では、本大会の組み合わせと、ブロックは校名のみを記載してあった。
 以前から思っていたのだが、東京には地方紙がないので、こうした高校スポーツ情報が少ない。首都圏でも神奈川新聞、千葉日報、埼玉新聞などそれぞれ地場の地方紙があり、展望や試合結果も詳しく書かれているのだが、加盟校数ももっとも多く、それだけ選手も多い東京に地方紙がないのは気の毒だと常々思っている。

 夏の大会にしても、地元局のMXが5回戦からやっと放映するというもので、序盤戦はどんな好カードがあっても放映されない。

経費の問題や、モロモロあるのだろうけれども、スポーツ文化の定着という考え方からも高校スポーツの育成は大事である。地方紙などの報道がその一端を担っていることもまた事実なのだ。
 そういう意味では、ネットの時代となって、地方紙とは違った形でも情報提供はできるようになったのではないかと思う。ということで、今回のレポートはボクなりの東京都大会の展望と情報を提供しく。

春季東京都大会展望
 東京都は昨秋から48校が本大会と呼ばれている秋季都大会に出場することができるようになった。これは、24ブロックに分けた一次予選で上位2校ということになるのだが、春はその48校は一次予選なしで、4月1日からの本大会に出場ができる。残りの学校が22ブロックに分かれて秋と同様に、一次予選を戦い上位2校が本大会出場となり、都合92校で本大会が争われる。
 東京都の特徴としては、この時点で本大会の組み合わせも決まっているということだ。

 1日から始まる本大会は、11日までは都内各地のどこかの球場(メインは神宮第二)で毎日開催され、ここでベスト8が決まる。センバツに出場する帝京と日大三はシードでそれぞれ6日、7日の3回戦が初戦となる。帝京は足立西と國學院久我山の勝者とあたると予想される。足立西は昨秋も帝京に中盤までは食い下がりながら、7回に3点を奪われてコールド負けしているだけに、成長を示したいところだ。城東も待ち受けている。

 順当にいけば帝京は準々決勝で早稲田実になるが、早稲田実には駒大高、二松学舎が立ちはだかりそう。早稲田実は鈴木健君、小野田君の1年生からマウンド経験のある投手陣の最終年だけに、期待も高い。


 日大三は、初戦で当たるであろう相手が国士舘と予想され、これは見逃せない。ここのゾーンには、久保君、水井君、三輪君、並木君といった中軸打線が充実している佼成学園や中本君関矢君の二枚看板が安定している明大中野、昨秋も日大三に1点差と食い下がった日大鶴ケ丘などがおり、大激戦だ。さらに、準々決勝でも明大中野八王子、八王子、創価と東海大高輪台の勝者などが待ち受ける。


 準決勝で帝京のゾーンの対戦相手としては、シード順通り、日野と成立学園かというところだ。日野は昨秋、逆転満塁サヨナラ本塁打した菊池君や安定した四番豊田君を軸とした打線は強烈。小柄だが投球術の巧い松本君と田村君の継投も安定している。成立学園は夏も投げていた西潟君が投打の軸。他には総合工科、広尾が好チームだが、有馬信夫監督、梨本浩司監督はそれぞれ城東を甲子園に導いた実績がある。その采配も見どころだ。ミラクルな駿台学園やブロックから上がってくるであろう注目校としては修徳がいる。


 もう一つのゾーンは混戦となりそう。見た目の迫力はなくても、試合になると負けない第3シードの日大二は横山君が復活してきて楽しみだ。今大会でも好投手の五指に入るともいわれている栃谷君のいる小山台の試合も見逃せない。昨秋準優勝の東海大菅生に雪谷や関東一、堀越、日大豊山といった中堅どころがひしめき合っている。四商の長身及川投手の投球も期待したい。ブロック予選からは東亜学園と東農大一の勝者が好左腕鈴木慶君の両国と当たるのも面白そうだ。


 20日からのブロック予選では、府中工のブロックが注目だ。府中工は土方君が安定している。もう一つのゾーンでは今や都立の雄の一角になっている足立新田が春原君、田中君らの投手陣に石谷君を中心とした打線は思い切りがよく、得点能力も高い。

 桜美林、岩倉、世田谷学園、拓大一、多摩大聖ヶ丘といったところも一次予選からの出場となる。カードとしては、国立と文京、桜美林と東京、芝工大高と安田学園などは好試合が期待される。

2010年2月24日(水)
第363回

 つい先日、花園で東福岡が優勝して幕を閉じたと思っていた高校ラグビーだが、早くも4月1週目から熊谷で開催される全国高校選抜大会の選考予選ともいえる地区大会が佳境を迎えている。関東地区では、8都県の新人大会の1位校と2位校が集って熊谷ラグビー場のB、Cグラウンドで関東大会が開催されている。この大会で上位に残ると、春の全国大会への出場がほぼ確定する。これに、希望枠推薦などもあり、このあたりは野球のセンバツ大会とよく似ている。

2月13日(土)
第10回関東高校ラグビー新人大会 1回戦(熊谷ラグビー場B、C)

桐蔭学園 103(36―0/67―0)0 市立船橋
茗溪学園 15(7―10/8―0)10 日 川
常総学院 116(55―0/61―0)0 佐 野
本  郷 31(19―0/12―0)0 深 谷

 朝からどんよりしていていたが、霙交じりの天候となってさすがに冷える。しかし、ラグビーは大会が決行される。見る側もかなりしんどい思いをしなくてはならない。
 正月の花園で準優勝を果たした桐蔭学園は、新チームとなっても県大会から試合を重ねていくうちに逞しさを増している。そして、この日は千葉県大会では2位となり自信を持って登場した市立船橋を寄せ付けなかった。花園でも注目されたFB松島君やRW竹中君のスピードは抜けた存在だった。結局、前半は6トライ3ゴール、後半は何と11トライ6ゴールで103点。しかも、それ以上に相手をOに抑えたDF力はさすがといっていいだろう。
 
 茨城県を制した常総学院も116点の猛攻を見せた。常総学院は昨夏石塚武生前監督が急逝。日本を代表するSHでもあった人だったが、志半ばの悲報が関東高校ラグビー界を包んだ。その遺志を引き継いだ佐藤和宏監督が質の高いチームを作り上げているという印象だった。大量リードしても、しっかりとしたタックル、最後まで走りきる姿勢は素晴らしかった。こういう姿勢こそが、相手に対する敬意だと思う。


 試合としては、霙の降る中見ていた茗溪学園と日川の試合は、1回戦屈指の好カードという評判にたがわぬ好試合だった。茗溪学園は平澤君、穂戸田君の両ウイングのスピードが注目ということだが、日川もそれに屈しないでついていっていたので接戦となった。左PR長坂君の177cm114kgというサイズにも驚かされたが、このパワーで当たってくるFWの1列目は迫力満点だった。ただ、後半、12分に穂戸田君が走り抜けて右隅にトライして逆転。さらに、29分にK稲川君が30m近いPGを決めて逃げ切った。
 
 東京都大会で名門國學院久我山に引き分け、抽選で決勝進出して優勝を果たした本郷はその勢いが健在。花園帰りの深谷に対してDF力を見せてノートライに抑え、逆に前半3トライ、後半も2トライでいい形の試合運びだった。「今年の暮れは、とても楽しみだわ」と、父母会は早くも花園モードに入っていた。



2月14日(日)
第10回関東高校ラグビー新人大会 準々決勝(熊谷ラグビー場B)

桐蔭学園 36(19―7/19―7)14 明和県央
本  郷 17(10―5/7―7)14 常総学院 
茗溪学園 29(12―12/17―12)24 正智深谷
流通経済大柏 50(19―0/31―0)0 國學院栃木

 今大会も優勝候補の筆頭とされている桐蔭学園が気鋭の明和県央の抵抗にやや苦しみながらも力を示した。県央はNO8小池君が大きな声でチームを引っ張る。若干、闘志が空回り気味になるところもあるが、それでも強豪に体を張ってぶつかっていこうという姿勢は表れていた。

 6分に桐蔭学園はPKからSH浦部君→CTB濱野君→RW竹中君とつないでトライ&ゴール。18分にもFW3列目でトライを加え、24分には再び桐蔭らしい展開で最後はエース竹中君につないで3本目のトライで19―0とリード。それでも県央は前半終了寸前にSH藤村君からSO湯井→RW富澤君とつないで抜け出しゴール中央へ意地のトライ。


 後半も桐蔭学園はFWとBKが一体となった攻撃で3トライ。これに対して、県央も14分にFB松井君のリターンから富澤君につないでゲインして、最後はLW高君が抑えてトライ。次へつながる価値ある一本ともいうべきトライだった。

 本郷も勢いに乗っていた。中盤の攻防が続いた試合は、13分に本郷が左10mのラインアウトからモールでFWがキープしてそのままトライ。常総学院は18分に右ラインアウトからSH加納君→SO吉川広君→LW小貫君とつないで同点トライ。そのまま前半はタイスコアかと思われたが、30分に本郷はゴール前10mほどのスクラムから右展開し、ラックっなってからNO8白石君が持って出て右スミへトライ。

 注目された次の一本は本郷が10分に左ラインアウトからBK陣の右展開で最後はRW篠崎君が抑えてトライ&ゴール。常総学院もその4分後に一本返したものの、その後は中盤のしのぎ合いとなり、本郷がしのぎきった。一つのプレーで歓声が右から左へと動いていく、熱の入った好試合だった。


 全国でも珍しいといっていい、ラグビーをスクールスポーツとして掲げているのが茗溪学園だ。イギリスのパブリックスクールを範として東京教育大(現筑波大)の出身者によって作られた。早くから中高一貫教育を行い、校内球技大会は中等部でもラグビーを行うという。それだけに、選手個々は楕円球慣れしているといっていいだろう。野球やサッカーなどと異なり、高校から本格的に取り組むことの多いラグビーだが、そりだけに早くから楕円球をいじっている選手たちはやはり球際がうまい。茗溪学園の選手たちを見ているとそれが顕著だという気がする。

 LOのモツアプアカ君、NO8のタウファ君と二人の100kg級の留学生はじめ、頑丈なFWの力のラグビーという印象の強い正智深谷に対して、茗溪学園は市橋君と穂戸田君の両WはじめBKの動きはシャープだ。前半はともに2トライ1ゴールだったが、後半に入って正智深谷が100kgのPR神保君が混戦から抜け出てトライでリードするが、13分に茗溪学園がBK右展開でトライし再び同点。24分にはFWが抜けて走り、29分には茗溪学園らしさを発揮して加点して突き放した。

 千葉県では圧倒的強さで勝ち上がってきた流通経済大柏は、この日も國學院栃木を圧倒。ほとんどワンサイド気味の展開で安定感を示した。

今週のエンドメッセージ
 一時の寒さもいくらか和らいで、少しは過ごしやすくなってきました。プロ野球もオープン戦が始まり、大学や社会人各チームもそろそろオープン戦が始まります。こうなると、いよいよ球春到来かなという気持ちになってきます。
 高校野球も3月の2週目からは練習試合解禁となります。今年は第二土曜が13日ともっとも遅いカレンダーとなりますが、第二週目からという規定ですから、授業に差し支えない範囲であれば8日の月曜日から対外試合を行ってもいいということになっています。